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覚めた夢、覚めて欲しくない夢

   

私は40歳の、ちょっぴり腹の出た、見た目の冴えない独身男、住まいは賃貸マンション、でもバリバリの銀行営業マン員です。

隣には気怠そうな色っぽい中年女が住んでいますが、表札に何も書いていないので、名前も知りません。

ところが、ある夜、接待の後で立ち寄ったカラオケボックスで、その中年女とバッタリ会ってしまいました。

彼女は大手生命保険会社のキャリアウーマン、自宅にいる時とは全くイメージが違いました。

でも、私は夢が覚めてしまい、一人で別のスナックに向いました。そこには、もう一人、夢を見させてくれるママがいます。

 乳房押さえ 神秘のとばりそとけりぬ ここなる花の紅ぞ濃き

(与謝野晶子 作)

さあ、どうなりますか・・

 

 
寝ぼけ眼の女
 

「暑いですね。」
「本当・・」

今朝も隣の熟女が眠そうな目でゴミを出しに来ました。

私はアサガオに水をやりながら、ふと思いついた俳句を口にしました。

  朝顔に つるべ取られて もらい水 (加賀千代女 作)

「えっ、何、吉野さん、俳句なんか読むの?」

おっと、うっかりしました。彼女の耳にも届いてしまったようです。

「あ、聞こえちゃいました?ははは、恥かしいなあ。」
「恥かしがることなんかないじゃないの。素敵な趣味ね。」
「いえ、そんな。真似事ですよ。」
「ウッソ、雰囲気、ありますよ。」

彼女は褒めてくれましたが、パジャマ替わりに着ていたと思われるTシャツには汗で染みができていました。気怠そうで、髪も乱れていましたが、生活感があるというのか、妙な色香を感じてしまい、私はどうもこの手の女性に弱いんです。

「あ、もう時間かな・・」
「あら、ほんと、6時半。ふふふ、お化粧しなくちゃ。」

  化粧なんかしなくていい・・今のままで抱いてみたい・・

私は妙なことを考えてしまいました。

自己紹介が遅れましたが、私、吉野太一は40歳、背丈は172センチ、ちょっぴり腹の出た、見た目の冴えない男、恥ずかしながら、未だに独身です。

住まいは賃貸マンションの1階です。高層階の方が人気はありますが、こちらの方が家賃も安く、それに広い庭が付いていますから、趣味の花作りを楽しめます。

隣に住む熟女ですが、今、お話しましたように、毎朝、顔を合わせるだけのお付き合いですから、本当はどんな人なのか、きっと独身なのだろうと思っていますが、表札には余計なことは何も表示していませんので、名前さえも知りません。

とても残念です。
 

 

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