幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー

スクープはいとも簡単に13

   

 美桜との疑念が晴れて、面接へと赴く美桜だった。だがその緊張感はかつてないほど高まっていた。

 美桜は自信喪失していたため表情も暗くなっていた。それでは受からない。そんな顔では望みはない。

 面接官の顔もみられない。でも快場のことを例として少しずつ語り始めた。

 それは自分よりも学歴が低く、社会に出て仕事をしている彼は今の自分よりも社会を知っている。

 だが、面接官は否定するように彼を無能扱いした。

 美桜は覆すように自論を口にし──

 

 社会のルールなんて無知だ。学歴もない。経験もない。今は一日一日を社会のルールを心得する日々に精進している。

 俺の眼前には勝手にライバル視している。他人を罵る、罵り屋と呼ばれる男だ。こいつを倒さなければならない。

 その前に大切なひとが今、大きな壁を切り崩そうと立ち向かっている。非力だが支えにならないとならない。

「あいつ、だいじょうぶかな…」

 いつもより視界が狭く青い空がどんどん灰色の雲に覆われ占拠されている。心にカーテンを閉めるよう不安にさせていた。

 面接会場に訪れていた美桜はこれまでにないほど緊張で肌がピリピリしていた。結果を恐れるようになってしまい、胸を張って足どりも地を踏み背筋を伸ばしている姿はもはや見る影もなかった。

 肩を竦め身をこわばらせていた。やめればいいのに、それでも就活の荒波から逸れてグアム島でバカンスという思い切った思考はないようだ。

 スーツも深い皺が刻まれていた。クリーニングに出す暇もない。きっちりしている美桜の性格が空回りしている。

「ど、どうしよう…」

 いつものように同世代の就活生が軒並みを連ねるように用意された椅子に座り順番を待っていた。

 一つひとつ席が面接室の入り口に近づいていく。入り口は就活生を食べて租借し骨と皮だけになって吐きだされる。その疲弊した姿は不合格決定だろう。これでいくつめだったか美桜も忘れてしまった。これまで学んできたことのすべての苦労や苦悩も吹っ飛んでいる。

 何一つできていない。姿勢、態度、声の質、心構えと就職するという意欲が枯渇していた。

「次のかたぁー」

 面接を通す女性がついに美桜と目が合った。

「どうぞ」

 呼ばれた。美桜は幻覚であってほしいと心の中では叫んでいた。なぜ、こんなところにきてしまったのか。もういやだ、面接なんか受けたってどうせ受かりっこない。無駄だ。あきらめムードの心情はすでに顔にあらわれていた。

「はい…」美桜は震える声を張り面接室に入っていった。逃げ出したいができなかった。

 どこか身体は前を向いている。美桜の思考は身体に引きずられるように足を前に出したのだ。

 面接官のまえになるといつものように話す美桜がいた。胸を張り、姿勢を正し、しっかりと質疑応答をし聞き取りやすい声、自分自身を見直しているというのに毎回これで落ちている意味がわからない。誠実な意思を持っているというのに志も女性なのに未来を見ている。

 不採用の理由が明かされないため、いつも同様の態度と言葉を繰り返す。

 面接官に言われた。「きみは社会に出ることで、充足するタイプのようだね」

 美桜は動揺した。そのための就職活動だと思っていた。

 その指摘に美桜は俺の言葉を思い出したという。

『就職のために、どれだけ資格を取っても有利になるとはかぎらない。それだけじゃない、その人、その心、やる気という内面が強いかどうかだと俺は思う。どんなときでもあきらめずに挫けず、しっかりと走り切ることだ。最後までな…』

 大失敗だった。考え方、心に決めた箱の中身がまちがった物を入れていた。

 俺と同じように“やるという気持ち”を持っていっていなかった。志の意味をはき違えていた。

 

-ミステリー
-, , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品