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ミステリー

スクープはいとも簡単に17

   

 向井田が復帰した。快場の動かない証拠を警察に言ったのに関わらず、快場がくつがえした。

 白河の家族捜索を記者目線で捜すことになった。それには快場一人ではできないことだった。

 これはさすがに記者としての経験がいる。そこで手足となって恩着せがましく使えるものとして向井田と組んだ。

 組みたくもないが一人の人生がかかっている。できる者が泣き言や嫌悪で手をこばねているばあいではなかった。

 二人は白河の家族を捜索に動きはじめた。

 

「どうやって捜すんですか?」俺より先頭を歩く向井田に投げた。

「やはりおまえにはまだまだナンバーワンの座につくには早いってことだな」

「いきなり罵りですか、いいですか、俺の下で俺の指示であなたは動く…」人差し指をつきつけた。

「行くぞ、あてはある。もし、うだうだとぬかす暇があるなら俺一人でいい。捜した手柄は俺のものだ。燻っていると干物になるぞ」向井田はどかどかと歩きだした。

「あてがあるだと…なんの興味も持っていなかったひとが俺の取材ネタに関心があったのか…信じられない」

「おい、行くぞ、くるかそれとも昼寝でもして待つか、好きにすればいい」

 向井田は振り返って俺の意思を確認した。

「行きますよ、あたりまえでしょ」

 振り返るなんてことをする男だとは思ってもみなかった。

 どうしてもナンバーワンの座に返り咲きたいようだな。俺を出し抜いてでも。

「そうこなきゃな」

 俺は俺なりに向井田との共闘を楽しんでいた。

 すでに白河から得られる情報は得ていた。その情報を基に向井田の調査スキルが発揮された。

 まずは白河自身が倒産した株式会社SHIRAKAWA companyを経営していた社長として、その所在地へと足をむけた。そこはいまは別のテナントが入っている。家族を捜すのに必要のない情報だと俺は感じていた。

「まぁ、そうだな…」向井田も納得していた。

「無駄足ですよね」

「情報はしっかりとこの目で見ること。そして、それが無いとわかれば二度とこないですむ」

 俺はおもわず開いた口がふさがらなかった。

 なら、住まいの方だ、と俺は内心思っていたがすでに察していた向井田だった。

「住まいは…と、お台場か」

「ええ、いいとこに住んでいる」俺は頷きながら答えた。

「いまはもう別の家族が住んでいるようだな、4LDKの住まい」

「駐車場付きですよ、そこ…」

「ああ、羨ましい、駐車場付きは実に羨ましい」

 向井田は調査するとき自動車が寝床になっていた。駐車場付きはつまり仮眠をとるためのベッド空間だった。

「それで?」俺は冷ややかに見ていた。

「すこしはおまえも考えろ、頭はなんのためにあるかわかっているだろ」

「わかってますよ…だから奥さんの実家がどこかって調べた方がいいんじゃないすか?」

「そんなの当然だ。おまえはある程度情報を得ているわけだ。俺は白紙同然なんだぞ、今は一から記事を書いている段階だ。待ってろ」

 向井田は牙を向いて俺を黙らせた。

 先走っても転んだら意味はない。じっくりと先輩の調査スキルを拝借しよう。

「奥さんは旧姓が木邑 箕季(きむら みき)、45歳か…、息子の弘(ひろむ)は現在20歳、おまえと変わらんくらいだな…くそ生意気ってことか…」

「はっ?」

「もしかしたら一人暮らししているかもな」

 向井田はつぶやきながらどんどん話を整理しながらすすめていた。

 俺は考えてもいなかった。たしかに自分に置き換えてみたら一人暮らししていてもおかしくはない。

 父親失踪後は息子の詳細は不明だろう。

「娘は、あず、現在17歳か…、こっちは母親と一緒だろう。今は高校三年だからな」

「ええ、そうですね」それは当然のこと。

「ちょっと待て」向井田は唐突に止めた。

「なんですか、なにか気づきましたか、居場所について…」

 向井田は俺の顔を凝視した。「おまえはボンクラだな」

 あー、また罵りからだ。「なんですか」頬を吊り上げて俺は反発な態度をとった。

「娘を基準に考えれば、高校生の娘はいまだに同じ都内の高校に通っている。通える場所に住居はあるということだ。フリーターの息子とはちがう!」

「あっ」俺は思わず息をのんだ。

 頭の回転が速い。こうも早期に範囲を絞るとは思ってもみなかった。いや俺がそういうところに思いつかなかった。

「よし、娘の高校はどこだ? ここにある資料には載っていない」

 向井田は俺の顔を見た。俺は無言で首だけを傾げた。

「おい、どういうことだ?」

「たしかに都内の港区あたりの女子高に通っているとは、父親の証言ではありました。でも、高校名は定かではない」

「なにいってんだよ、娘がどこに通っていたか、わからねえはずねえーだろ。父親だ、家族だろ!」

 俺は顔を歪め困惑した。向井田は罵っているわけではない。未熟な後輩に檄をいれている。

「たくっ、おまえもそうだが、その親父もそんなんだから…あっ、だから家族も見限ったわけだ。なるほどねぇ、原因さえわかれば解決策はみつかる」

 向井田は失望感を露わにしたが、ひらめきから解決策もみつけた。人情めいた話をきらいではない男だった。

 俺もだ。白河という人物像の弱点を見つけた気がした。「ほんとうだ、そういうところかもしれないし、たしかに解決策がわかった。でも、それって本人しだいじゃ…」

 

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