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現代ドラマ

鈴子 第十五回 挫折

   

 
へこたれてはいけない
 

支援者たちがいなくなると、事務所はお通夜のように静かになった。

健一は勿論、姑の雅代も、山形所長も金子秘書もがっくりと肩を落としていたが、鈴子だけは「皆はん、ほんまにご苦労はんどした。」とその場にいたスタッフ一人一人にお礼をいい、お茶を淹れていた。

「若奥様、そんなことは私がしますから・・」
「ほな、お願いします。」

鈴子は結城早苗にお茶の世話を任せると、健一の前に跪いた。

「どうした?」

顔を上げた健一はげっそりやつれていた。

「あんさん、しっかりせなあきまへんよ。」
「あ、うん、そうだな・・」

活力を失った彼には聞きたくない言葉だったが、鈴子は遠慮しなかった。

「こんままやったら、雑誌に書かれたように『脇の甘い二世議員』で終わってしまいます。うちはそないな男の妻ではあらしまへん。」
「鈴子・・」

優しい京女なのに、こんな強い言葉・・驚いた山形所長が鈴子を見ると、「不倫」だとか「裏切り」だとか、そんなことは全て乗り越えた、決意を秘めた顔をしていた。

「うちはあんさんに、今、ここで誓って欲しいんよ、もう一度やり直すと。」
「分っているけど、今はそういうことを言う時じゃないよ。」
「いえ、ダメどす。負けたら終わりではありまへん。始まりどす。事務所の皆はんがこうして揃っている、こん時に、あんさんの気持ちをはっきり言って欲しいんどす。」

夫の手を握って迫る鈴子に気圧され、健一は口籠ってしまい、周りの者はどうしたらいいかと迷っていた。が、その時、「健一、鈴子さんの言う通り、私も聞きたい。」と姑の雅代が口を開いた。

 

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