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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第5話「重なる目的」

   

エリザはシアンに天使に関する目的を打ち明ける。そして、ついにレッドラットへ向かうのだった。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第5話「重なる目的」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

「どうしてなの……ウィリー……」
「エリザ、そいつって……お前が前に話してた、ジンク・ハーワードの親戚か?」
「……うん」
「一体どうなってやがる! その絵……見るからに気味悪りぃしよぉ!」
「……でも、筆跡も間違いないわ」

 兄様だったら、この絵に記された名前を見て何と思っただろうか。私と同じように取り乱しただろうか。それとも、平気な顔をして何事もなかったかのように前を向き、それでも歩み続けただろうか。もしかすると、ルイスはこの絵についても何か知っていたのかもしれない。自分が天使の生まれ変わりだということも知っていたくらいだ。その可能性もあるだろう。天使と関わりのある絵について、知らない方がおかしい。

「そうだとしたら、あの人は……カーネット王家の秘密も知っていた?」
「あ?」

 私はシアンを見上げて、考える。
 全て隠したまま旅を続けるなんて、やはり無理な話だったのかもしれない。どこへ行っても、私が兄様を探す以上、『天使』とは関わることになるのだから。
 私は鞄の中から、師匠に渡された絵本を取り出した。そして、シアンに差し出すと、覚悟を決めた。

「これを読んでみて。それから説明します」
「――――これ、親父のだろ」
「うん。読んだことはないよね?」
「ねぇよ。こんな絵本、読む機会なんかねぇっつうの」

 そうぼやきながらも、シアンは私の隣に腰を下ろして、大人しく絵本を読み始めた。眉をしかめる彼を見ながら、私は師匠の言葉を思い出していた。

 ――――この人もまた天使に関わる者なのだ。ルイスの正体や天使に纏わる話をシアンに話すことだけは避けたかったのだけれど、そんなことを言っていられるほど甘い状況ではないのだ。
 カーネット王国と天使には確実に何か繋がりがある。天使の悲劇を描いた絵画に、カーネット王家と並ぶほど長い歴史を持つハーワード家の当主の名が書かれていたのだから。
 国の伝承や学んだ歴史にすら天使に纏わる描写は一切ない。彼等が生きていた時代は簡単には遡れないほど昔のことなのだ。その絵をどうして、ウィリーが描けたというのだろう。その理由は一体何だ。

「――――……エリザ、お前も読んだんだよな?」
「うん。島にいた時に」
「……その絵と嫌でも内容が繋がる。親父がお前に読ませたくらいだ。ここでこの絵を見つけたことは偶然じゃねぇ」

 彼はそう言って立ち上がると、無言で町を見下ろした。彼にとっても本の内容は衝撃的だったのだろう。

「そうね、シアンの言う通り偶然じゃない。その本に書かれていることは、実際にこの世界で起きたことだから」

 それを証明出来るのは、私の兄だ。

「だからきっと、生き残った天使もいるはずよ。私は彼等に会いたい。ううん……会わなくてはいけないの。そして、精霊の末裔達が持つ亡の欠片が、来るべき時を止める為に必要なの……!」

 私にしか止められないのなら、私がやると決めた。大切な人が関わっているのなら尚更だ。

「天使を探すこと。精霊の末裔が持つ亡の欠片を集めること。どれもこの国を救う為に必要なことだと私は思っているわ」
 

 

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