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ミステリー

スクープはいとも簡単に20 END

   

 快場は自宅で窓から差す朝日を浴びていた。いつもとちがった朝だった。美桜の朝食を無言の感謝で食べていた。

 すると美桜はひと言いった。「仕事、行かないの…」

 快場は自分の道を改めて思い直し、そして退職した。

 これまでやってきたSNSの動画投稿。これを仕事にしていくことを決意した。

 これまでスクープに躍起に追われるような時間に切羽詰っていた。

 快場はそこまで加わってはいなかったが、向井田という罵り屋に手痛い洗礼を受けて、社会の厳しさを知った。

 鳳来もまた未熟な快場に手を差し伸ばした理由を話す。

 辞職の決意はそれでも揺るぐことはなかった。
 

 そして快場は、レンズから新たな被写体を撮る──
 

 堂々の完結

 

 窓の外から差す木漏れ日はやさしい朝の時間を俺に教えてくれた。

 新たな決意を温めてくれてもいた。

 ジュー、とフライパンでスクランブルエッグとベーコンを炒めている音は幸福をもたらす。

 美桜がいて俺がいる。まだ22歳だがこの暮らしが絶対条件になっている。

「きょうも暑いな」

 9月のシルバーウィークに入った。今年はどうやら夏の暑さが延長している。このままだと10月に入っても暑いかもしれないと天気予報は連日つたえていた。

 季節ごとに外出するときのつらさというものがある。夏は暑く、冬は寒い。春と秋が取材する者にとってはいちばん活動的になる。

「そうね、まだ暑いわよね、きょうも外出しないほうがいいわよ、世間も休みだし、ゆっくりしたら」

 美桜は朝食を用意しテーブルに並べていた。

「でも行かないと」

 トースターで焼いた食パンにベーコンとスクランブルエッグをのせて食べてはじめた。

「いただきますって言って」

「言わなくても感謝しているよ」

 黙っていても料理が出てくる食堂と思われることを美桜はいやがるのだろう。

「それならいいんだけど、でも言ってほしいな」

 咀嚼する彼の顔を窺うように目の奥をのぞく。

「わ、わかった…ひだひゃきます…」口の中はすでに租借していたため発音ができなかった。

 くすっと笑う美桜は許容したのか微笑んだ。野菜ジュースをマグカップにいれてテーブルに置いた。

「報道部の仕事、ほんとうにもう行かないの?」美桜は念を押すようにいった。

「うん、行かない…」

「いいの?」

 マグカップを右手で持って口の中をさっぱりさせた。

「俺はやりたいことをやる。やはり個人主義なのかもな。組織に従事しているとダメみたいだ」

「社会に出てわかったこともあるってことね。それもひとつの選択ってわけか」美桜は無表情で言った。

「やってみて思ったことだ、正解かはわからない。おそらくちがう。でも俺なりに出した答えだと思っている」

 ひと月前に鳳来に辞表を提出した。いや、辞表の言葉と意思を明確に伝えた。

 

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