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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第6話「列車の中で」

   

レッドラット行きの列車の中で、エリザはもう一つ約束をする。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第6話「列車の中で」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話
 

 

 

***

「どうしたんだろう……」

 予想していなかった事態が起きた。私は戸惑いを隠しつつ、いびきを掻いて眠るシアンを見つめた。あの彼がここまで警戒を解くとは、相当疲れていたのだろう。私は周囲に視線を逸らし、乗客達の会話に耳を済ませた。
 どうやら、この状況に戸惑っているのは私だけではないようだった。

 ――――全く、運転手は何をしているんだ……?
 ――――約束の時間に遅れちゃうわ。
 ――――説明も何もないだなんて!

 次々と乗客達の不満の声が上がる。

 ――――先程まで、順調に運行しているように見えていたこの列車が突然動きを止めてから、もう数十分が経つだろうか。相変わらず乗務員からの説明はないし、黙っていても扉が開くわけでもない。完全に車両に閉じ込められた缶詰め状態なのだ。彼等の不満が募ってもおかしくはない。

「……一体、何が起きているの」

 妙な感じがする。確かにこの事態に戸惑っている乗客もいるが、*そうではない者*もいるからだ。時折溜め息を溢す彼等の反応は正にこう言っている気がした。

 『またか』――――と。

 列車が再び動き出す気配は今のところ感じられない。このままでは、レッドラットへ辿り着くのに何日かかるか――――。申し訳ないが、彼を起こして策を練る必要がある。

「起きて、シアン。シアンっ」
「……! どうした」
「きゃっ」

 私の声に一秒もかからず反応をすると、シアンは大きく目を見開いて、無遠慮に私の体を自分の元へ引き寄せた。そして、流れるような手つきで長刀を手にした彼の手を慌てて止める。
 先程まで寝入っていたはずなのに、何て俊敏な動きをするのだ。

「シアン、待って! 敵ではないの。長刀を置いて? ね?」
「はあ? だったら何だよ。まだレッドラットに着いてねぇだろ?」
「うん。でも、さっきから列車が動かないの」
「ああ?」

 私が困り果ててそう口にすると、シアンは眉を寄せて窓の外に目を向けた。

「あー……ほんとだな。何で動かない?」
「さあ……ほとんどの人が何も知らないみたい」
「何だそれ……」
「……けれど、知っている人もいそうだよ?」

 私は一人立ち上がると、後ろの席に座っていた中年の女性の傍へ行き、声をかけた。

「こんにちは」
「え?」

 突然、知らない子供に声をかけられた彼女は、戸惑いながらも私を見返した。
 

 

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