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幻影草双紙91・気味の悪い部屋2

   

 事故物件の部屋なのです。

 

 
 小堀十和子は、超常現象や幽霊を信じていなかった。
 だが、マリ叔母さんは信じていたのである。
 マリ叔母さんは、霊能力が強く、陰陽道などの知識も豊富に持っていた。
 小堀十和子が探してきた下宿用の部屋も、「これは方角が悪い」と言ったのである。
「十和子、見てごらん、この見取り図では、ここがトイレだろう。北がこっちだから……」
 マリ叔母さんは、見取り図のコピーを見ながら説明した。
 そして、東京区分地図も広げた。
「大学はここ、ということは、この下宿から方角を見ると……」
 マリ叔母さんの話は止まらない。
 陰陽道とか方違えの話になると、もう夢中なのである。
「でも、マリ叔母さん、家賃が安いのよ。そんな好条件、滅多にないわ」
「それがおかしいというの。都心の23区内の部屋じゃぁ、安すぎる」
「そうかなぁ」
「いいわ、明日、いっしょに見に行きましょう。叔母さんが調べてあげる」

 次の日、二人は部屋を見に行った。
 不動産屋が立ち会っている。
 小堀十和子は、部屋を見直していた。
 最初に見たときは、リフォームしたばかりのきれいさに目が奪われていた。
 だが、改めて見直すと、いくつかの欠点が目に付いた。
 キッチンが使いづらい。
 トイレ付きユニットバスが狭い。
 ベランダからの見晴らしが悪い。
 壁が薄い。
 まあ、生活を楽しむ部屋ではないであろう。
 しかし、勉強して寝るだけなのだから、これで十分だ。
 何よりも家賃が安いのが最大の魅力だ。

 マリ叔母さんは、部屋に入るなり、囁いた。
「何か……、気味悪いなぁ……」
 不動産屋は、この言葉を聞き、むっとした。
 だが、何も言わない。
 マリ叔母さんは、部屋の中を、こまかく調べた。
 床、壁、天井をじっくりと見たのである。
 とくに、キッチンの天井の照明がある部分を見つめていた。
 そして、磁石を取り出すと、方角を確認した。
「ここ……、不吉だ……、霊が……」
 不動産屋が言った。
「お客さん、ケチをつけるのかい?」

 不動産屋は、俗に“センミツ”と呼ばれている。
 千に三つでも契約が成立すれば御の字、という業界なのだ。
 厳しい世渡りをしているので、ガラも悪くなる。
 不動産屋の事務所に戻ると、彼は、また言った。
「お客さん、ケチをつけるのなら、別に借りてくれなくてもいいんだよ」
 ドスを利かした声でマリ叔母さんに言った。
 だが、マリ叔母さんは動じなかった。
 マリ叔母さんは、不動産屋を睨みながら言った。
「あの部屋、安すぎる」
「だから、お買い得ってやつさ。お客さんが不用なら、別な人に貸すぜ」
「借りる人、いる?」
「え?」
「あれ、事故物件でしょう?」
 

 

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