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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第7話「セリオ・フィズライト」

   

人のいない町でエリザ達に声をかけた青年、セリオ。レッドラットまで案内してくれるという彼の目的とは?

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第7話「セリオ・フィズライト」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

 少女のように高く、軽やかな男の声だった。
 路地から聞こえてきた独特の声色に顔を向けて、私は僅かに息を呑む。シアンは子供呼ばわりされたことが気に食わなかったのか、額に青筋を浮かべて大きく口を開くと、私の前に立ち塞がった。

「ふっざけんじゃねぇぞッ! こいつは餓鬼だが俺は違ぇよ、クソがッ!」
「ふうん? そうかなぁ」

 現れたのは、薄い青色の髪をした細身の少年だった。黒く濡れている瞳に感情は見えない。ただ息をしているだけのように見えた。

 ――――どんなに笑顔でも、妙に生気を感じさせない男。だが、声と佇まいがどこか浮世離れした気品を放っている。一目で人を惹きつける人間と言うのは、彼のような者のことを言うのだろう。それに、容姿は少年そのものなのだけれど、何故か成熟した大人の男を目の当たりにしているような感覚に陥ってしまう。
 どうして、私は彼をそのように思ってしまったのだろうか。
 理由もわからないまま、私は彼の目の前に立った。

「綺麗な髪ですね」
「どうもー」
「――――……けれど、土埃が付いていては台無しですよ」

 背伸びをして、彼の横髪に触れる。少し癖のついた髪に絡まっていた埃を取り払うと、私は男から手を離した。男は呆気に取られていたが、我に返ると唇に笑みを浮かべた。

「……知りもしない男に躊躇いなく近づく女の子、か。へえ、面白いや」
「見たところ、あなたは軍人ではないようですね。私達に近づいた理由は何です?」
「あー、いや。その男にちょっと見覚えがある気がしたんだけど」
「俺?」

 だが、シアンの方には全く覚えがないらしい。その様子に気づくと、男は笑みを浮かべて緩く腕を組んだ。

「うーん。だけど、俺の気のせいだったかも。引き止めてごめんなさい、お二人さん。それじゃ、さよならぁ」

 そう口にして去ろうとした男の動きを見て、私は僅かな違和感を覚えた。そして、気がついたら彼に手を伸ばしていた。

 ――――

 そう口から出かけた言葉に私自身が一番驚いていた。

「あっ」
「……何?」
「……いいえ、あの……」

 息が苦しい――――。心臓の辺りに手を当てて、私は唇を噛んだ。どうして、こんなにもこの人との距離がのだろう。

「痛むんでしょう? 
「……!」

 私の言葉に一瞬驚いた男に微笑みかけた。鞄の中から応急処置に使えるものを取り出しながら、私は閉まっている店前のベンチを指差した。

「座って下さい。無理をしてはだめ」
「お、おい! お前、何する気だッ」
「何って……手当てだよ」
 

 

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