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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】3

   

 サンライズ出雲行きの寝台列車にはおどろくことに御影とおなじ目的で出雲駅へとむかっている者が数名同乗していた。

 出雲市で開催されるテレビ番組のクイズゲームである。

 そして殴打され被害にあったのは田井というクイズ王だった。

 さらに周囲には田井を知る人物がいるが、誰一人として名乗り出なかった。無関係を装っていた。

 田井の部屋をしらべるため車掌を先導に赴くが御影が意見した。

 犯人が誰であるか、指をさす──

 

 御影がむかっているさきは、出雲市内で開催されるゲーム番組の収録である。勝ち抜き戦の頭脳バトルときいていた。もっとも現地にいってみないと実際のところはわからない。

 依頼人がかいつまんで説明したくらいだったため内容のすべてを把握はできていない。それでも切実に訴えてきた依頼人の声に小柴が電話で対応したが快諾した。

 そして気になるのはこのサンライズに偶然乗車している顔ぶれである。

「まさか、ここにいるのは同じ番組に出演する者が数名同乗しているというのか」

 犯人はいったい何が目的で田井を襲ったのか。本当にゲームに参加するライバルの出場を削ぐために強行したというのか。

 動機としては十分かもしれない。時には人の心の強き欲望に支配されて善悪の区別もわからなくなる。

 そんな過激なことをしてでも賞金をせしめたいのだろう。人生を棒に振るようなことだとしても。天秤に計れるものではないが金のために犯罪をし人生を賭けている犯人はけして頭のいい者ではない。

 ゲームに出場しても高が知れた結果だろう。優勝などムリに決まっている。

「それともべつの目的があるのか──」

 御影は思考をめぐらせた。偶然にもぼんやりとした視界の中に一人の男性が目にはいった。

 四人の輪になっていた三人の男と一人の女、そして輪の端にいたから最初は気づかなかったが五人目の男がいた。会話にはいろうとしないその男が何かを目撃したのか違和感をおぼえた。

「とりあえず部屋をしらべたほうがいいんじゃない」

 利己的な女性が鼻をつきだすような物言いでいった。

「はい、そうですね…、では」

 たどたどしく車掌は促がされると、倒れた田井という男の部屋へむかった。

 どこが部屋かはわからなかったがその場にいた野次馬がそれぞれの部屋を示し残っている部屋が田井の部屋だった。

 車掌が乗車券を調べるためにその部屋へおとずれたが再確認のためにはちょうどよかった。

 これにより御影は誰がどの部屋かを把握できた。

 倒れて負傷した田井は医師が診て別室で休ませている。目が覚めないのは殴打された脳に問題があるかもしれない。岡山まで数時間もある。そのあいだに目が覚めることを祈るばかりだ。

「被害者の部屋に入っても意味はない。それに何か盗られているわけではないとおもう」

 御影が居合わせた野次馬にむけて意見した。そして車掌は戸惑ったようにむかおうとした足にブレーキをかけられ立ち止まった。

「なぜそうおもうのかな、きみ」長身の大人びた声の男性がいった。

 御影は諍いをしようとおもっているわけではない。これは普通の洞察からくるものだった。

 なぜならB寝台の部屋には自分で決める四桁の暗証番号を設定できる。これが部屋の鍵となる。部屋に入ることは番号を聞きださないとならない。

 会話なしに田井は背後から襲われた。背後から襲われたのであればうつ伏せになる。この男は仰向けになっていた。後頭部を殴打されればうずくまる姿勢になりどうしてもうつ伏せになって倒れる。なら仰向けになったのは犯人が田井の身体を動かしたことになる。

「論理的推論っていうのかな、ただの推理です」

 御影はさらっと鼻を高くしていった。

 聴衆している同乗者はあ然となりくちを半開きにしたまま黙っていた。

 本来ならすぐに警察をよんで鑑識によって衣服などの状態を調べるところだが、ここは寝台列車ということもあり調べることができない。走行中のため、周囲はまだ山の中を走っている。

 止めるにしてもこんな山奥で止めるのはかえって被害者の安否を危ぶませ、そして犯人も取り逃がすことになりかねない。

 岡山の瀬戸と出雲の切り離しするときまで止まることのないサンライズ寝台列車はいまだに闇を疾走している。強制的に止めることもできるかもしれないが車内に医師がいたため応急処置をした。致命傷は避けられていたこともあり、いまはただ気絶しているだけだ。いずれ目が覚めるだろう。

「クイズ番組かゲームをしにいくんですかね、それにはでれないでしょうね」と、周囲の話しからその医師はそう診断した。

 田井は別室で休んでいるが倒されたときに身体をうつ伏せから仰向けにした理由、それにはかならず意味がある。

 それに気づいている者がここには大勢いるようだ。

 三人組の男女、そして四人いや五人組の男女だ。この八人はもしかしたら明後日から開催される“Life Game”の参加者ではないかと推察する御影だった。

 こそこそとなにかわけあり顔の連中だった。態度でわかることはある。あからさまで隠そうともしないのはその八人はいずれも顔見知り程度ではある。たがいに素知らぬふりをしているが御影には人間関係の縮図を探るのに長けていた。

 見のがすわけがない。

 御影はそういうことに眼が利く。探偵だからだ。観察力、洞察力、これは頭脳明晰とは無関係にひとしく、たぐい稀な経験や周囲の感覚を感知する視野の広さがひつようとされる。

 御影探偵は若干23歳で習得している。

 車掌はふわふわと右往左往するように御影の言葉に足が止まったまま目が泳いでいた。

 長身の大人びた声の男の質問に御影はこたえるも相手はそれいじょう詰問してこなかった。

 これはあくまで御影の推理。想像からなる推理だ。人の仕草や会話を総合的に感じただけのストーリーを書き上げたものだ。

 反論するだけの材料がまだない。物語の起承転結の転へと動くだけの確証がまだない。

 御影はそれでも探偵である。その肩書きで異論を唱える。

「あなたたちこれは殺人未遂事件だ。わかっているのか、この電車にはまだ犯人がいる。ここで電車を止めても救急搬送できない。あんたらの目的が何かはしらないがそれは後回しじゃないか」

 御影のその言葉に顔がこわばる面々だった。その表情はあきらかに硬直している。まるで胸のうちをのぞかれたように図星をつかれた者だけがみせるささいな動揺が顔にはあらわれていた。

 そのままクロージングしたようにその場は静けさがひろがった。

 

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