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現代ドラマ

鈴子 第十六回 臥薪嘗胆

   

落選がきまった夜、夫と二人きりになった鈴子は、「謝らなければならへんことを、なんでしたん!」と鈴子は感情を爆発させた。

健一は返す言葉がなかったが、「約束する。もうあんなみっともないことは絶対にしない。」と誓った。

「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人」

主役の座を降りた健一と鈴子は厳しい現実に直面した。

これまでは当たり前のように座っていた場所は、当選したライバルのもの。しかし、こんなことでくじけていては次はない。

健一も鈴子も積極的に選挙区内に出て行った。

臥薪嘗胆がしんしょうたん、全ては次の選挙のためだ。

 

 
うちは我慢してたんよ
 

「山形さん、金子さん、本当に申し訳ございませんでした。」

支援者、事務所スタッフが全員帰った午前1時過ぎ、健一は改めて二人に頭を下げていた。

「まあ、もういいじゃないですか、健一さん。」
「そうですよ。再選目指して頑張ろうって、皆の気持ちが一つになったんたから、前を向きましょう。」

二人はそう言って健一を励ましてくれた。

「しかし、それにしても鈴子さんは強くなったなあ。」
「本当ですね。恐れ入りました。」

健一も素直にそう思ったが、もともとはお姉ちゃん頼りの弱い女の子、あのことで相当に傷ついている筈だ。

外を見ると、住まいの離れの明かりはついていた。

  ちゃんと話をしないといけないな・・

「それでは、先に上がらせて頂きます。」
「ええ、どうぞ。ゆっくりお休み下さい。」

健一は残務のある二人にいとまを告げると、事務所を出た。そして、離れのドアを開け、リビングに入ると、思った通り、鈴子は着替えもせずにソファーに座って待っていた。

「お疲れ様どす。」
「あ、いや、君の方こそ・・先に休んでいてもよかったのに・・」
「ええ、何だか目が冴えてしまって・・」

  眠れないのか・・
  やっぱり、ストレスが溜まっているんだろうな・・

上着を脱いでソファーに腰を下ろした健一はネクタイを緩めながら、話を切り出すタイミングを見計らっていた。しかし、それを見越したように、鈴子は「お茶でも淹れまひょう」と立ち上がってしまった。

 

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