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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】5

   

 御影探偵の推理が冴え渡り、犯人の上埜を追いこんでいく。証拠はまだ本人が所持している。

 犯行につかわれた凶器であった。

 仲間たちが必死で弁論するも当の本人は観念したようにうな垂れていた。

 御影という探偵の洞察力は見事なもので、ただただ感服している頭脳明晰な連中を圧倒していた。
 
 

 すると上埜の思いがけない動機が明らかとなった──

 

「待った、なぜそのクイズ本で殴ったとおもったんだ?」

 五人組の紫が厳しい口調でとめにはいった。

「それはあなたたちがこのサンライズの列車に乗りこむ際、一人の男性がクイズ本を手に持って乗りこんでいた。それをおもいだした。あなたたちがそのひとたちだってね。肌身離さずだいじなものであれば偶然手にもっていたものを振りあげて凶器としてつかってしまったのは衝動性として成り立つ。だからいそいで部屋にもどした。いまはテーブルのうえに無造作におかれているだろう」

「列車に乗りこむときの場面をおぼえていたのか、たったそれだけで…」紫は目を丸くさせていた。

 三人組たちも関係がなくなっていたが御影探偵の洞察力だけで犯人を言い当てたことに驚いていた。

 それを聞いていた上埜を含めた全員が圧倒されていた。なぜそう結びつけることができたのか、探偵という頭脳はどういう働きをしているのか、すべてが想像の域で立証はできない。そう指摘してやりたいが上埜が図星のような顔をしていたのを見て言葉を飲んだ。

「まいったな、そこまで言い当てられるものですか、何一つとしてみていない、まさに机上の空論じゃないか。俺が犯人と言い当てるのはむりがある」

 上埜はうつむき、やるせないような吐露をつぶやいていた。自分の愚かしさを呪うかのように呪文を唱えているようだった。

「犯罪者には犯罪者なりの空気を纏う。あなたは自分で犯した罪というベールを田井に覆い隠した。それでもにじみでてしまう。どんな理由であろうと神はみているんですよ。俺はただその意志が流れこんできて、伝達しているとおもってもらってかまわない」

「神の言葉でも聞いたというのか──」

 体格のいい日下田が、人間離れした頭脳の使い方をする者だと驚愕していた。

 御影はそんな疑問を晴らすつもりもなく話しをすすめた。

「動機はやっぱりゲーム参加を阻止することですか」

「ああ」

 明後日からおこなわれる“Life Game”というテレビ番組のクイズ大会の収録に参加するライバルを蹴落としておこうというのが上埜の狙い。それでも御影は動機がやや弱いとおもっていた。もっと根底よりも深いなにかがある。田井はそうとうな実力者であるということだろう。

「なぜ、そこまで躍起になる。これは犯罪だ。取り返しがつかないことになっていたかもしれない。田井さんが命を落としていたらあなたは殺人罪で逮捕される。どのようなお考えだったのか話せますか」

「田井さんは俺より一つ年上で大学もT大を卒業して俺はY大学だった。そういうところでも俺より勝っていた。高校生からクイズ番組で競ってきた相手だった。問題という枠でずっと闘ってきたライバルだとおもっていた。だが彼は変わった。なにかにとり憑かれたかのようにクイズ番組ではなく探検者として気持ちが移転した。もう俺とのクイズバトルで競いあうのをやめたようなことを口走った。ここ一年ほど表舞台から退いて妙なことをしていると噂できいた」

「妙なこと」

 上埜は御影の問いにうなずいた。

「ある秘宝を探り当てるために躍起になっている」

「ある秘宝?」

 御影は眉唾のような話しに顔を顰めた。まさかそんな動機とはおもってもみなかった。たがいの知性の高さをくらべるために競いあってきたライバルだからこその理由があるとおもっていた。まさか少年が夢みるような話を聞かされるとはおもわなかった。

 このご時世そんな古くさい伝説は伝説のままだろう。

 上埜の顔は真剣そのものだった。どこか鬼気迫る表情に御影の面構えもひきしめた。

「まさか、その秘宝というのは本当にあるってこと」

 御影は眼を細めた。信じられないが純粋に耳を傾けると人生のすべてを賭けた者の真剣さと本気の声がはいってきた。

「俺はそんな伝説を追いもとめるよりもクイズで知能を競わせることのほうがよっぽど快感であると意見したんだ。田井は鼻でわらいとばした。なら俺がその秘宝というのを先に見つけてやろうっとおもってこのメンバーで行動をともにしている」

 上埜はほかの四人に視線を流した。

「この四人はクイズつながりではないのか」

 御影はいまだにこの五人の人間関係の水面だけしか見えていない。

「山神と和城はT大学卒業、紫と日下田は俺と同じY大学だがこの四人は頭脳明晰でクイズ番組もよくでていた。平行してサークルではミステリーサークルにはいっていた。世界の不思議なことに関心があり秘宝という伝説めいたお宝にも知識は豊富だった。そこで田井がもとめている秘宝というのがどういう代物か、一緒に探していた」

「俺たちはいうところの冒険家だな」

 山神がつけくわえていった。

 

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