幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】7

   

 磐木家に宿泊させてもらう御影は落ち着かなかった。

 依頼人の由真の優勝への熱意が火傷しそうなほど熱かった。なにがいったい彼女をそこまで静かに滾らせているのか、御影は解き明かさないとならない。

 しかし氷室名探偵ではなかったためか、終始御影を揶揄するようによびかける。

 由真の自宅は古民家だが旅館のような風合いがある。

 家族を紹介され、明日からのクイズゲームへの策を練る。

 そこでクイズゲーム参加への理由を聞かされた御影は──

 

 出雲駅から依頼人の自宅までは車で数十分のところにある。今日からお世話になる場所だ。

 宿泊することになるが御影はこわばっていた。

「どこかべつのところに宿泊してもいいんですけど」

 運転する由真は無表情だった。

「いえ、うちでお願いします。ぜったいにこのクイズバトル優勝しないとならないので──」

「すごい熱意ですね」

 御影は由真の真剣な顔つきに若干引き気味だった。テレビ番組に出演するということになるがお祭り騒ぎなことだろうとおもっていた。一時のにぎやかなパーティー。思い出話にするくらいではないか、その程度だろうと軽んじていたが、この鬼気迫る顔は並大抵の事情ではない。

 初めて会ったとき笑顔すらなかったものの、由真の顔は初々しさあふれる初恋の少女がみせる心が湧き立つようなものとおもいたかったが、そうではなさそうだ。

「わたしの家が作戦場所になりますから協力してもらいますよ名探偵の右腕さん」

 かなり強めの要請だ。これは心してこの依頼に向き合わないとならない。

 御影はただの依頼ではないと核心に触れた。「なにかあるな──」

 探偵を前にして、いや助手席に乗せて揶揄するとはいい度胸ではある。

「何か事情があるのかな?」

 ワゴン車に乗っている二人はスピードが増すタイヤの振動音が臀部からつたわっていた。アスファルトから砂利道に変わったのを体感で感じていた。

「それも自宅についてからで──」

 それから車内は会話がいっさいなかった。まるで輪都と一緒に車でドライブをしている気分だった。

“輪都と同タイプの人間なのだろうか。この依頼、たのしくないかもしれない”。

 御影は肌がピリピリと逆立っていた。おなじようなきづかいをしていることがとても居心地をわるくさせていた。

 タイヤの回転速度がゆるやかになり、そしてエンジンが止まった。すぐ目の前は自宅の玄関前まで寄せていた。

「降りていいですよ」

 由真は気持ちが落ち着いたのか声質が軽かった。

 御影は荷物を持って車を降りた。由真が足取りも軽くさっきまでの重々しい空気がどこふく風、すっかり颯爽としてその若さに比例していた。

「どうぞ探偵さん」

「はい、どうも──」

 依頼人の自宅は古民家のような造りでかなりの大きさだった。古民家風なため豪邸とはよべないが旅館というよびかたが適しているだろう。

 これなら御影一人潜りこんでもそれほど厄介事ではない。寝泊りするところはありそうだし、依頼を受けて滞在するのだから飲食の面倒は依頼付きであるとおもっていいだろう。

 娘が抱えている何かを話してもらうのにもおそらく時間を要する。時間をきにせずじっくりと作戦を練るのにこれは必須条件の環境でもある。

 由真という娘は頭の回転と先を見据えた行動と戦略を練るタイプのようだ。

 御影も人間を見る眼はある。これでも探偵だからだ。氷室名探偵以上の期待で活躍しないとならない。
 
 

 明日一日は受け付けとインタビューを受けることになっていた。クイズゲームの本番は明後日の月曜からだ。

 一日早く前乗りしたことになる。どうやら十分に打ち合わせと信頼を結ぶために、この娘も時間がひつようだと察しているようだ。

 由真が玄関を開けて御影が後につづいた。古民家の空気が御影を包んだ。長年この地で根を張る家屋のため奥ゆかしい風が吹いていた。

「おせわになります」

 誰が聞いているわけでもないが節度ある態度で片足を踏み入れた。

「お昼ご飯になりますので居間にいきましょう。あとでお部屋をご案内します」

 由真は唐突に来客を労わるような思いやりのある言葉を投げかけた。

 居間にはすでに由真の家族が座卓を囲んでいた。

 磐木家はぜんぶで四人。由真の父、母、そして妹。

 父、和史かずし、43歳の公務員をしている。この日は日曜日のため休みである。

 母の多美たみ、42歳の専業主婦。手料理は抜群になんでも作れるという。

 妹の小夢こむは高校二年生の17歳。口達者の小生意気な娘だ。めずらしい名前だとたずねると、ふんっと顔をそむけた。

 あまり気に入っていないらしい。かわいいとおもったが両親は名前についてはいっさい語る気はないようだ。

 その点、長女の由真の名前は平凡につけている。

 

-ミステリー
-, ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品