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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第9話「偽りの本当」

   

エリザはついにセリオを問い詰める。

「誤魔化しても無駄です!」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第9話「偽りの本当」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

「お嬢さん? ねえ、お嬢さんッ!」

 私の異変に気づいたセリオが声を荒げる。そんな彼の声こそが私の発作を助長するのだとも知らずに――――。

「エリザ、目ぇ開けろ」

 シアンが私を背後から抱き締める。世界から覆い隠すように、強く。

「シアン……?」
「ああ」

 彼が私の正面に移動するのがわかった。そして、私に言い聞かせるように肩を叩くと、静かに口を開く。

「俺を見ろ。目を開けて、ゆっくりでいいから」
「嫌ですっ」
「いいから開けろ」

 私の震える手にシアンの大きな手の平が重なる。私の震えを吸い取るように、彼は強く私の手を掴むと、無理矢理顔を上げさせた。思わず目を見開いた私の瞳に映ったのは、シアンの金色の瞳だけだった。セリオの渦巻くような闇でも、砂嵐でもない。

「シアン……」
「お前は簡単に俯いていいような女じゃねぇ。顔上げろ」

 ぐっと唇を噛んで、涙を堪える。

「お嬢さん」

 セリオが私の様子を窺うように顔を覗き込んできた。思わず肩を震わせた私を見て、彼は動きを止めた。
 彼が怖い。けれど、恐れるよりも先に心が叫ぶのだ。彼の心に応えろ、と。その意思がどこから沸き立つものなのかはわからない。まるで、短い夢を見ているようだった。いや、今この瞬間こそが夢なのかもしれない。それとも――――……。

「私じゃなくて、
「っえ」

 そう呟いて、私はセリオの頬に手を伸ばした。だが、その瞬間、彼は跳ね上がるようにして私から距離を取り、僅かに唇を開いた。その瞳は普段よりも見開かれていて、混乱しているようだった。
 私達の間に長い沈黙と見つめ合う時間が続く。
 その時間を崩したのは、シアンだった。

「エリザ」

 彼が私の頬に手を添える。

「お前は夢なんか見ちゃいねぇ。ここにいる」
「そう、だね」
「……もう大丈夫だな?」
「……うん」

 私はセリオに手を差し出して、微笑んだ。

「驚かせてごめんなさい、セリオ」
「……ううん、へーき」

 彼は躊躇いながらも、手袋に包まれた自身の手を私の手の上に重ねてくれた。そんな彼に笑みを返してから、私は話を元に戻すことにした。

「それにしても、大事な門の守りを慣れない者に任せるだなんて……とてもじゃないですけど、信じ難いですね」
「そ。ちょっと妙だよね」
「……ええ。町民であるあなたを知らないのが妙です

 私がそう呟くと、シアンは鋭い視線をセリオに向けた。彼は相変わらずセリオを疑っているようだった。

「町は広い。俺の顔を知らない人間がいてもおかしくないよ?」
「……そうですね。門を通る以外に町へ入る方法はないのですか?」
「あるよー。町内の極一部の人間しか知らない抜け道が一つね」

 その言葉を聞いて、私は眉を寄せた。
 町の人間でも知る者が少ないその抜け道の存在を、本当に彼が知っていると言うのなら、彼は一体町ではどんな立ち位置にいるのだろうか。
 

 

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