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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】8

   

 由真の強い信念に驚かされる探偵の御影はバカンス気分を恥じていた。

 クイズゲームに優勝しないとならない目的。それがはっきりとわかった。

 御影はなぜそこまでして取りもどしたいという由真に問いただした。

 由真ははぐらかすように黙るが、しかし御影はサンライズ寝台列車で事件を解決し、そこで犯人の仲間の話をした。

 その者たちの目的を告げる──

 そして、御影は信頼を勝ち取ろうと由真とむきあうが──

 

「ちなみに優勝することで達成するのですか」

 御影は控え目にたずねた。自分の推理がはずれたことで自信が崩壊しそうだった。計り知れない羞恥心が胸をしめる。

「優勝しないとならない。それがわたしの目的──」

 この異様な強い信念にはなにがこめられているのか。腹をくくっていかないとならない。ちょっとバカンス気分で挑んでいたことに御影はお茶の間で反省した。

「優勝したら優勝杯を貰えるみたいです」

「優勝杯──」御影は小声で反芻した。

 由真はうなずいた。うつむいた顔はそのままだった。

「その優勝杯のカップなんですが、祖父の骨董屋にあったものなんです」

 御影の目が大きくなった。賞金目的ではない理由であることはわかったが、そこまでして取りもどしたい理由がこんどはきになったが、御影は察した。

 投げ掛けられた問いにすばやくこたえた。

「まさか、盗品なのか」

 顔をあげた由真は御影と顔をむきあわせて一瞬目が見開かれた。

「すごい、察知力ですね。探偵というのは嘘ではなさそうね。今のだけでそう繋げるのはムリがあるとおもったから…」

 無関心そうに父と母は静かにお茶を啜っていた。妹の小夢だけは御影の顔をじっと見つめたが姉が話しだすと顔をさげた。

「まぁ、その、あなたの感情を組んで加味し、そして推理していけばそうなるものですよ。それが探偵としての直感、感覚、感性というもので…」

 あまりにも嬉しくなりだらだらと能書きを垂れていた御影だったが途中で遮るように由真は言葉をかぶせてきた。

「事件は七年前になります」

 御影はくちを閉ざした。

 由真は説明した。顔色はとてもすぐれない。

「7年前に、今回の優勝杯が盗難にあったんです。優勝杯というより金のカップといったほうがただしい。手のサイズより倍ほどの大きさで、アンティーク用で実用性のものではない。鑑賞用のもので価値としては時価100万円相当です。それなりに価値はあります。きっと売り飛ばしていつのまにかテレビ局に流れ着いたのね」

 御影は腑に落ちなかった。

「待って、それって、価値としては100万円程度のものを盗難したってこと…、ということはそれが渡りにわたって今回の優勝杯になった。優勝すれば奪い返すことができる。だから優勝に執着しているんだね」

「ええ。そうです」

 由真の顔に初めて笑みが浮かびあがっていた。

 その笑みは御影にたいしてのものだ。察しがよく推理に長けているのは紛れもないものだった。もしかしたらテストされているのかもしれない。

 依頼はしたがパートナーとして役目を果たしてもらえないのであれば意味がない。

 御影も探偵としてぬかっているわけではない。本気の度合いがどうやらちがっているようだ。

 御影は眼を見開き直した。その輝きは本気の輝きを──。彩っていた。

「盗難した犯人は売り飛ばしていない。なぜなら質屋や裏ルートのそういう闇市場で流通したところで、100万円の価値の証明書がない。価値の裏付けがないだろ」

「そうですね、たしかに…、祖父がそういっていましたから」

「純金なら劣化はしないだろう。100万円の価値はそれなりに目利きの質屋や鑑定士ならわかるだろうね。でも、一般的な店頭では売れない。出所がはっきりしないものは引き取れないからね」

 由真は同意するようにうなずく。

「なら、これはなんのために盗まれたとおもいますか?」

「それは…」

 おやっ、御影はふと違和感がよぎった。

 由真がはじめてかぶさるような口調がとまったとおもったら、瞳が泳いでいた。

 御影は相手の動作や態度、観察眼に長けた探偵である。一瞬のわずかな矛盾をおもわせる仕草で悟らせてくれた。

「優勝杯のカップになにか秘密でも──」

 頭のなかで光が照らされたように脳が活性化した。

 御影も持っている情報が一つあったことを思い出した。そして由真のいまの様子を結び付けてみた。

「……」

 あきらかに表情が変わっている。それは御影にとってはひじょうにせつなく残念でしかたがなかった。

 秘密をわかちあえるだけの信頼はない。依頼をしているけどクイズで優勝できるためのパートナーである。それだけの利用価値はない。たったその表情と言葉の経緯の中で自分の存在価値が位置づいた。

「お姉ちゃん、なんか気づいたみたいだよ。探偵さん」

 小夢が口を挟んだ。すべてを話してもいいんじゃないか、という合図であった。

「俺が昨夜ここへくるときにサンライズ出雲寝台列車内である事件が起きました。その事件は解決したんですけど、そこで出会った人たちがいます。そして犯人は一人だったが仲間の四人はその一人が手を汚したことを嘆いていました」

 由真は眉を傾けた。

「探偵さん、なにがいいたいの?」小夢が脇から姉の代わりに意見した。

「そのあと彼らの目的について語ってもらいました。犯人と仲間の彼らが追いもとめていたもの、それが…、この出雲につたわる秘宝──、きみは知っているのかな」

 今度はまるで他人事のように静寂が包んだ。

「そう…でも、その話しをするのはちょっと…、骨董店にでもいって話しましょう」

 由真は躊躇いながらいった。

 御影は依頼遂行をするのに由真とはひとまず「仲良くなる」それだけだった。

 

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