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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】9

   

 ついにゲーム当日となった。

 まずは予選からはじまる。リーダーとサブ、それぞれが入り口のゲートをわけて入場した。

 予選はリーダーにペーパーテストをおこなってもらうものだった。

 正式なルール同様に難問には一人で悩む必要はない。サブに協力をもとめられる。

 テストの開始のベルが鳴るも、サブの御影はじっと待っているだけだった。

 期待と不安と焦りが待つだけの御影の心をついばむような気持ちになるも、あっというまにテスト時間の80分は過ぎていった。

 結果は──

 

 昨日一日はどのような問題の出題がでるか、お茶の間で作戦を練ることで終わった。

 思考も意志も充足していた。ほかのチームのことも気になっていたが、依頼人は優勝以外の視野はないようだ。

 御影はサンライズ寝台列車で同乗した頭のいいクイズ慣れした連中がいることに、脳裏ではいやな熱量を感じていた。クイズだけをいえばつわものぞろいであると認めざるを得ない。

 相当手ごわく、それでいて依頼をまっとうできるか不安はあった。

 最初はお祭り気分で参加した依頼だが依頼主の本気で優勝したがっている熱意に根負けしていたが、覚悟が強ければ強いほど御影の本質が滾りはじめる。

 賞金欲しさではない。7年前に盗まれた古びたカップを取りもどそうとしての参加だ。まさか優勝賞品のカップが盗品で、由真の祖父の物であるとは奇妙な巡りあわせだ。

 そもそもどんな経緯でそんなものがテレビ局の手に渡り優勝杯としてなったのか御影はクイズの参加をしながらもスタッフや関係者に聞きだそうと考えていた。

 由真を優勝させられるかどうかはわからない。本人次第と切り離してしまうが、カップの経緯をたどればべつの方法で手にいれられるかもしれない。それは法的手段として。

 盗品の裏付けができれば取りもどせるかもしれない。優勝するよりはるかに容易いようにおもった。

 御影の探偵としての直感だ。

 テレビ局のアシスタントディレクターが参加者を集めようと呼びかけていた。

「これから予選を開始したいとおもいます。リーダーとなる方はAゲートへ入ってください。サブの方はBゲートに入ってください。Aゲートの方たちはそれぞれ個室に入りペーパーテストをしてもらいます」

 どうやらよりクイズバトルのレベルを高めようとペーパーテストで実力を測ろうとしている。問題を解くのは一人ではない。解答できないときは無線をつかって、10秒間だけサブと通信することができる。そのあいだに解答を得られればクリアできる仕組みとなる。したがって孤独に悩むことはない。

 由真と御影はそれぞれ別室でイヤホンマイクをつけて待機していた。参加者は一人ひとり個室が与えられ一部の冊子が机に置かれていた。

 だだっ広い特設会場が用意され、仕切りを隔てて簡易的な個室を作りあげた。かなり重労働ではあったかもしれない。予選で予想以上の人数がきてしまったことで、適正な審査をおこなうにはこれが公正である。

 昨日の受け付けの段階でクイズ番組とかでよく目にする名の知れた者や有名大学に在籍している者、クイズ研究家など本職の者までいることがわかった。

 さすがに御影は蒼白していた。推理力ならまだしもクイズというひっかけを念頭にあるような問題と由真のサポートができるのか、急激に自信が枯渇していった。

「この予選、クリアしたいものだ。ここが一番の山場だろう。探偵社に依頼してきて予選で終わりたくない」

 イヤホンマイクがつながっているかどうかテストをするために一度通信が許可された。

「聞こえてますか」

 由真の声が御影にとどいた。

「聞こえています。こちらの声も聞こえていますか」

 由真は、はい、と端的に応えた。

「がんばりましょう」

 御影が気を利かせてエールをおくった。

「そういうことは結果をだしてからにしてください。予選敗退は困ります」

 御影は開いたくちがふさがらなくなった。手厳しい激を逆にもらった。

 開始は朝の9時。なんら合図も報せもなかったが、ついに開始のベルが鳴った。

 反射的に由真はすかさず冊子を手にとり一枚目を開いた。

 サブのサポート側は尋常ではない緊迫に心臓が弾んでいた。これはただごとではない緊張感が全身を走っている。温度や感覚、神経といった何かしろの体内の経路を矛盾という言葉でわかりやすく表現するも、どこか言いようのない感覚に見舞われた。

 制限時間は80分。

 御影は固唾を飲み、由真のよびかけを待った。イヤホンにかすかな呼吸音でもしていれば緊張感がつたわってくるとおもうが、テストを受けている者のテーブルにボタンが置いてある。それを押さないと通じない。

 ただ待つだけは苦痛でしかたがなかった。席も動くことはできない。じっと椅子に座り机のうえに置いてあるパソコン画面に、いつでもリーダーからの疑問を入力して検索できるよう準備していた。ここにきて怠ることはなかった。

 80分の時間は無言のまま過ぎた。

 準備万端で待っていた御影のサポートなしのままテスト時間が過ぎていった。

「なにっ! 由真ちゃんは俺を頼ってこなかった、つまり全問自力で解けたのか」

 信じられなかったが由真はけっして頭脳明晰、知性派な印象ではなかった。聡明さはあっても見た目の美人ではあるにせよ、80分一度も音信がないというのはそういうことになる。

 クイズはどういう問題か、それすら御影はわからないままだ。これは御影としては祈るしかなかった。由真が本当に難なく解答していったと信じて席を立った。

 

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