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現代ドラマ

鈴子 第十七回 二人三脚

   

 
「ここでかましませんか?」
「はい、結構どす。」

タクシーの運転手は気を利かせて、商売の邪魔にならぬようにと店の少し手前で車を停めてくれた。

選挙、選挙で余裕がなく、里帰りは2年振りだったが、車を降りて、辺りを見回したが、店の感じも、周囲の様子も変わっていない。

「あ、鈴子叔母ちゃん、いらっしゃい。」
「こんにちは。」

ちょうど学校から帰ってきた姉の長男、晶啓あきひろが出迎えてくれた。彼は鈴子の長男、智樹より2つ上の15歳だが、すっかりお兄ちゃんになっていた。

「お母ちゃん、ただいま。」
「お帰り。」
 

梅雨はじめじめして、むし暑い季節ではあるが、京都ではアジサイが咲き、目を楽しませてくれる季節でもある。

京都駅からタクシーで実家に向かう道すがら、雨に濡れ、花が青く輝いているものがあちらこちらから目に入ってくる。そして、懐かしい中西呉服店の看板も。

玄関の引戸を開けると、以前と変わりない母が待っていた。そして、父も姉の晶子も、皆、元気そうだった。

「おばあちゃんは?」
「『鈴子はまだか?』って、首を長うして待っとったから、直ぐに行っておやり。」
「ふふ、おばあちゃんらしい。ほな、失礼して。」

鈴木は挨拶もそこそこに、バッグを居間に置くと、祖母の様子を窺いに奥の座敷に向かう。

実家は改築を重ねたとはいえ、元々は京町屋の造りだから、「うなぎの寝床」と言われるように奥行きが深く、祖母のいる部屋は表通りの喧騒も届かない。

 

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