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現代ドラマ

鈴子 第十七回 二人三脚

   

 
襖を開けると、祖母は静かに眠っていた。
穏やかな顔をしているが、頬骨が目立つほどに痩せていた。

鈴子は布団の傍に腰を下ろしてしばらく様子を見ていたが、祖母は寝返りを打った拍子に目を覚ました。

「おや、鈴子、来てたんか?」
「うん。ばあちゃん、気持ち良さそうに寝とったから。」
「ほうか・・」

祖母は起き上がろうとしたが、「ええよ、そのままで」と鈴子は押し止め、布団を掛け直した。

「智樹と小百合は?」
「二人とも学校やから。」
「あ、そやね。まだ6月ね。ふふふ、うち、惚けとった。」

祖母の微笑みは昔と変わらず優しく、「健一はんはどないしとるん?」と夫のことまでも気遣ってくれた。

祖母は健一が雑誌で叩かれたことも、選挙に落ちたことも、みんな知っていた。惚けてなんかいない。それどころか、「鈴子、失敗から学ぶんが人生。しっかりと健一はんを支えんといけへんよ。」と励ましてくれた。

「おばあちゃん、ありがと。」

鈴子は祖母の手を握りしめたが、祖母の手には以前のような温もりはない。やはり体は弱っている。

翌日、鈴子は東京に帰る前にもう一度祖母の部屋を訪ねた。

眠っている祖母の顔を見ているうちに、「おばあちゃん」と自然と声が出てしまった。すると、「あら、鈴子・・」と目を覚ましてくれた。

「これから帰るけど、今度は智樹も小百合も連れて来るから。」
「そら楽しみ。元気でいなくちゃ。」

そして、祖母は「無理はあかんよ。健一はんと仲良く暮らすんよ。」と微笑み、鈴子を見送ってくれた。

鈴子の元気な様子を見届けた祖母は、翌7月、これで役目を終えたかのように静かに天国へ旅立った。

 

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