幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

現代ドラマ

鈴子 第十七回 二人三脚

   

 
「ふふふ、今年は選挙が無いから油断しているかも。」
「そうなんですよ。これを見て下さい。」

ニヤっと笑って机から取り出した「実態調査ファイル」には選挙区ごとの政治家の盆踊り参加状況とそこでの「会費」支払いの有無が詳細に書かれていた。

「へえー、これ、いいじゃない。明日の会議に出しなさいよ。」
「そうですか・・へへ、もう一度、社長賞ゲットかな?」
「ははは、そうなれば大したものね。」

陽子は彼の背中をポン!と叩いた。

「橘、柳の下には何匹のドジョウがいると思っているんだ?」
「はあ、星の数ほど・・」
「この野郎、調子に乗りやがって。よし、お前のために、ページは空けておこう。ドジョウなんてつまらねえことを言わず、鯉でも釣り上げろ!」

翌日の会議でも、こうして編集長から後押しされた橘記者は、「大丈夫か、公職選挙法第199条の2 上期を徹底分析」と題し、タオル配布、盆踊りは寄付金などの実態を纏めた記事を書き上げた。

「へへへ、社長賞を見込んで、アルマーニのスーツ、オーダーしちゃったよ。」
「呆れた野郎だ・・」

そして、自信満々で迎えた10月号の発売だったが、「まあ、そんなもんですな」と読者の反応はイマイチ、雑誌売上は前回に遠く及ばなかった。

目論みの外れた橘記者は「スーツの支払い、どうするかな・・」とため息をついていたが、陽子はクスッと笑っていた。

  橘君、あなたの記事、良かったわよ。
  今度、ご馳走するから・・

「はい、編集部ですが?」
「バカ野郎! 余計な記事を書きやがって!」
「はあ、どの記事のことでしょうか?」
「惚けるな!」

電話の相手は記事で名前を挙げられた議員の事務所からだ。

「ご指導頂きましたことを糧とし、より良い雑誌作りに励みます。」

陽子はそう言って電話に向かって頭を下げていたが、顔には何故か微笑みがあった。

  鈴ちゃん、相手は焦っているわよ。頑張って!

 

-現代ドラマ
-, , , , , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品