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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】11

   

 サンライズ出雲寝台列車で起きた事件を御影の活躍によって解決した話を小夢に聞かせた。

 同乗していた者のなかに妙な話をしていたのを思い出した。

 それが“出雲の秘宝”という伝説めいた話だった。

 ここへきて御影はその謎を解き明かすためには、優勝賞品となっている優勝杯のカップにヒントがあると推察した。

 そして、盗難されたカップのいきさつについて詳しく聞くと──

 

 小夢は探偵のざれ言に耳を傾けていた。

「へぇ、探偵さんって、ほんとうに推理とかして犯人とか暴いちゃんだ」

「えっ、まぁ、そうだね」

 尊敬されるかと思ったが女子高生には稀有な存在であっても興味はないようだ。この年代の憧れの職業ではないからだろう。

 ちらっと姉である由真を見た。こちらもまたなんら関心はない。目の表面が曇っていた。

「でも犯人を迅速に捕まえるだけの頭脳がある。それに期待しています」

 由真は発破をかけた。信用はできても信頼できないのだろう。信用に値するパフォーマンスを御影はサンライズでの事件を解決をアピールした。由真はそれに期待しているというのだ。

 サブとしてのハードルを自らあげてしまった。御影の顔がわずかにひきつっていた。

 明日から決勝のLife Gameの開始。予選を突破した者たちが凌ぎを削ってゴールを目指す。

 人生をその手で決めるためのスタートの合図が弾け飛ぶだろう。

 御影はそれよりもあることがきになっていた。優勝賞品であるカップ。その経緯を独自に探るひつようがある。

 サンライズ出雲寝台列車内で犯罪を犯した上埜は妙なことをいっていた。

“この土地には秘宝が眠っている”。

 その在処を示す地図がどこかにある。それをめぐってクイズ王の田井は上埜に襲われた。

 そこで御影は結びつけた。優勝カップになんらかの秘密があり、そして盗難された。カップには、そのなにかが隠れている。そう考えるのが自然だったからだ。

 こんかいのイベントで賞品として掲げられているこのカップのことをしらべてみればわかること。

 由真はこれが盗まれたといったが、ちいさな骨董屋で祖父が経営していた頃のくわしい話を聞かせてもらうことにした。
 
 

 今から7年前のこと。当時の写真を由真から見せられたが、店内の雰囲気は今とはくらべものにならないくらい雑踏としている。

 こんな店によくその一品だけを盗みだしたものだと御影はおもわず感心していた。

 おかげで祖父がショックのあまり寝こみそのまま亡くなるという始末に孫は恨んでいるのが態度でわかる。

 息づきもできぬまま今日まで全力で自分なりのベストを尽くしてきたのだろう。

 ふと由真は幼少の頃から水泳をしていた。県大会で優勝をしたこともあると話していた。祖父が亡くなり、店を引き継いでからは水泳は辞めたそうだ。

 それから7年が経ち、このクイズゲームの番組で賞品としてその姿をあらわした。当時の関係者である由真がいち早くきづいて驚愕したという。

 紛失届けは出していたが古いカップ、ほとんど警察は相手にしていなかった。100万円相当の品だとしても行方がわからず手がかりもない。骨董品店というのに防犯システムがぬるかった。防犯カメラすらついていなかった。

 由真が経営してからはリノベーションした店内には防犯カメラが目を見開いて店内と店先をみつめている。

 祖父のときはその隙をついて容易に犯人は店内に侵入し窃盗していったのだろう。

 しかし当時のことを由真は話すと店内はもともと雑踏としていたせいもあるが、荒らされた形跡はなかったと話す。

 どれが価値があるか、探り当てる痕跡があるはずだが、当時の写真や由真が思い出すように語る話の中には荒らされた形跡はないことがわかった。

 つまり、もともと目当てのものを物色していた。当時の警察の捜査でも見解も同様だった。

 犯人にたどる証拠や痕跡がまったくないため足取りはつかめなかった。どこかの質屋などに金額相当に見合うだけのものが届けられる可能性があるとみたが、結局該当するものは一点も見あたらなかったという。

 海外に売買した。もしくは純金でできているため溶解して形すら変えて売ったという推測も成り立つ。足がつかない収益方法なんてものが財宝には隠されている。

 そこで警察は動けなくなった。由真は悔やみきれず今日まで唇を噛みしめて祖父が遺した骨董品店を背負う覚悟をきめて引き継ぐことにした。

 いずれどこかで情報を得られると信じて7年間一人で護ってきた骨董品店。その代償はけして軽くはない。

 顔から心から笑みが消えてもしかたがないことだ。

 是が非でも取り返そうと由真は力づくで奪い返す腹でこのゲームに参加している。

 由真の秘策の秘密兵器としてパートナーに御影が抜擢されたが、まさかの誤算。

「本当は氷室名探偵にお願いしたかったんですけど…」

 御影はまたかよ、とまだまだ自分が探偵として認められていない世間の認識力の低さに腹が立った。

 それもそのはず、いくら探偵としての手腕をアピールしても目の前で推理ショーでもしないといまどきの若い女子の心には響かないのかもしれない。

「それでもあなたには期待しているのは本当です。ここへ来る途中に難事件の犯人を言い当てて捕まえるなんて、やっぱり氷室名探偵の右腕でないとできないこと。いまのわたしが笑っていないのは、笑っていられるばあいではないので、ごめんなさい…」

 察してはいる。どんな状況で信念をもって挑んでいるか。そのきもちを汲めないほど御影は自分勝手な探偵ではない。

「いいよ、わかっている。信じてもらえただけでうれしいよ。しかも期待してもらっている」

 御影はこれでやっと肩をならべられる関係になったとほっと胸をなでおろした。

 しかし気になっていた推察がもしかしたらと疑念がよぎる。

 盗難の時効は7年だ。時期からして合致する。

 御影はある人物の顔がはっきりと浮かんでいた。なにをおもいついたかは、そのひらめきにはまだ確証はないが、それでも頭の中ではよぎっている。

 犯人の顔が──

 

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