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ラブコメ

ひねくれ俺たちの青春シャウト 14

   

 しかし、誰が言ったところで、仮に西条先輩が言ったとしたところで、それは事実として状況と辻褄が合わないのだった。
 どうなってんだ、これ。
「予想通りだ、面白い構造してるなお前」
 霧間先輩が、何事かをつぶやく。
「どういうことだ? 霧間」
「西条、お前は気付いてもおかしくないと思ったんだけどな。澤崎は酔ったら人格が変わるだろ?」
 人格? なんだそりゃ。
「たしかに人が変わったように酔っぱらうけど、それは酔っぱらってるだけで人格が変わってるわけじゃないだろ? なあ澤崎」
 矛先が俺に向いている。たしかに、向いているんだけど、答えようとする俺は俺じゃなくて別の俺だ。だって俺、こんなこと言わねーもん。
「酒って便利ですよね。特殊な能力を酔っぱらったってことにして隠蔽できるんですから。さすがに、ワイン系の酒を飲んだらこうなるってのは自分でも予想してませんでしたけどね」
 とりあえず、状況整理。
 俺、おかしくなっちまったらしい。
「お、おま……」
 西条先輩を始め、小沼先輩、三木林先輩、未だ目を細めて気持ち悪そうにこちらを見ている夢見(むかつく)たちは再び驚きの表情を見せる。
「な、わかっただろ。澤崎はワイン系のカクテル、もしくはワインを飲んである程度アルコールがまわるとこうなるんだ」
「わ、わっかんねーよ霧間! これ酔ってるだけじゃないってのか?」
 思わず席を立ちあがる西条先輩。
「普通に酔っぱらってキャラが丸ごと変わるってのはまああり得ない話じゃない。けどこいつはどうだ。どう考えても人格変貌してるだろ。澤崎はただ酔っぱらってるんじゃない。人格が変わってるんだ」
 なんだか霧間先輩、俺のことを宇宙人か何かのように語ってはいるが、脳内では俺、澤崎玖炉は依然としてイケてない大学一年生なんだけど……。でも、たしかに、イケメン風なことを喋ったのは周りの反応からしてどうやら俺らしい。でもどうなってんだ。
「お前らほんと、鈍感だな。あたしが一言で説明してやるよ」
 と、西条先輩に続き霧間先輩も席をたつ。
「澤崎は飲む酒の種類によって酔い方、つまり人格が変わるんだ」
「「えええええええええええええええ」」
 叫ぶ叫部員たち。
 そして、なぜか俺は驚きつつも驚嘆の声をあげたりはしなかった。つまるところ、やっぱり人格が変わっているらしい。元の俺、つまり酔ってない状態の澤崎玖炉は思考の中にとどまってはいるが、表に出る俺はワイン系の酒を飲んだ状態の澤崎玖炉だ。
 霧間先輩の説明が合っているのだとしたらそうなる。
 にわかには信じがたい話だが、たしかにそれだと辻褄が合うよな……。
「とりあえず落ち着きませんか? バーでこの騒ぎようは迷惑です」
 何か言ってる! 俺またかっこいいこと言ってる!
 バーテンダーは苦笑いしながら、他にお客さんいないからいいですよと言ってはくれたが、しかしまあ叫部員だけあって落ち着きがない。小沼先輩に関してはなぜかおかわりを注文している。あんたは飲み過ぎだ。
「ワイン澤崎の言う通りだ、一旦落ち着こう」
 霧間先輩は言う。あんたのせいだけどな、こうなったの。
「ワイン澤崎くんって……」
 いつも笑顔の三木林先輩もこんな状況ではつっこみを入れたくもなるらしい。
 と、西条先輩が俺の肩に手を置く。
「お前、俺の立ち位置だけはとるなよ?」
 イケメンじゃない! この西条先輩は果てしなくブサメンだ!
「後輩がそんなしゃしゃりでたりしませんよ。そこらへんはわきまえてるつもりです」
 それに比べて俺イケメン過ぎるだろ!
「くそおおおおおおおおおお澤崎いいいいいいいいいいいお前酔いが覚めたら覚えてろよおおおおお」
 クールな西条先輩が珍しく叫んでいる。叫部、本慮発揮し過ぎだろ今日。
「まあとりあえずお会計して出ません?」
 そんな冷静な夢見の一言で、今日の場はお開きとなった。

 

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