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風刺 / ユーモア

札束セイリング

   

実質フリーターで半ニートの深谷正は、不良をやっていた頃の先輩、柳下から「下ろせるだけの金を持ってすぐに来てくれ」と連絡が入る。

待ち合わせの場所に行ってみると何とそこには、お金を定価よりも安く売ってくれる自販機があった。

半信半疑で八千円を投入し一万円をゲットした深谷は、偽札でないことを確認すると、すぐさま手持ちのお金を放り込み、大金をゲットすることに成功した。

とは言え、この「金の成る木」の存在はうっかり口外することは難しく……。

 

「正、ホラ、あんたいつまで寝ているのよ。暇なんだったら起きて、母さんの内職でも手伝いなさい」
 深谷 正は、二十年前と同じように母親に叩き起された。
母親はキリキリと忙しく仕事をしている。多少年を取ったことと、内職の量が減ったことを除いては、昔と何も変わらない光景だ。
「母さん、あんまり金にもならないんだから、だったら食事作ってくれよ。昨日の夜から何も食べてなくて」
「コンビニに行けばいいのよ。最近のコンビニは最強なんだから。で、そのついでに求人誌を貰ってくるといいわ。食事したら内職を手伝うのよ。あなたのために母さん頑張って、ボールペン作りの仕事、取ってきたんだから」
 しかし深谷は素直に感謝の言葉を述べることはできなかった。
 自分の目の前にある積み上げられた装置をどうするかという問題に直面していたからだ。
 中途半端に重くそして小さい物体であるだけに、作業机としてもイマイチ使い辛い。
「焼け石に水って言うか、山火事にバケツ一杯の水って感じだぜ、それぐらいじゃ。まったく問題が解決しないぜ」
「バケツ一杯の水でも、頭に被ったり飲んだりすれば、随分役に立つでしょうに。ほら、ボールペンの組み立ての仕事もあるわよ。今時中々外部委託はできないんだから」
 海外の安物にやられちゃってね、と唸る母の姿に、深谷もまた心中で唸っていた。
 正社員ではないものの、結構真面目に三年間も働いて得た五十万円という大金のほとんどは、目前に存在する容器に取って変わった。
 しかも不良品ではなく物自体は良いだけに誰を恨むこともできない。

 

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