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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】13

   

 御影の携帯電話にメールが届いた。

 小柴からだった。サンライズ出雲寝台列車での小言を伝えるものであった。

 苦い一夜を過ごすも、どこかやるせない思いを抱かせる。

 早朝から母親の多美と言葉を交わす御影は、娘のクイズ番組出演について親としての意見を聞いた。

 そして、カップがいつ盗まれたのか経緯をたずねた。

 由真の本当の目的について感づくのだが──

 

 殺伐とした空気がかつてないほど御影の探偵としてのちからを萎縮させていた。

 食事を終えて寝泊りさせてもらっている部屋に一人静か時間をすごしていた。布団とちいさなテーブルしかない。六畳ほどで殺風景な部屋に一週間居座ることになる。気持ちの置き場がこの部屋にしかない虚しさをいまになってきづいた。

「まいったな…」

 仰向けになり寝転んでいた。

「こんなきつい依頼になるとはおもってなかった」

 古めかしい天井が降ってきそうな錯覚に陥りそうだった。

 寝る前に探偵社に報告のメールを打って送信しないとならない。これは出張したからには義務であった。特に初日は重要だった。

 ここにくるまえには旅行気分だった。輪都に向かって休暇を楽しめなんていっておきながら疲弊しているのは御影だった。

「あいつ何してんだろう、ちゃんと依頼をかたづけられているのか」

 輪都を気にかけてしまうほど御影は弱々しくなっていた。もはや推理どころではない。

 携帯電話が震えた。メールが届いたようだ。さっそく探偵社からの返信だった。

“御影くん、ご苦労さま。報告はわかったわ。とりあえず無事のようね。それと意外な事件に巻きこまれてたいへんだったわね。あきれるほど事件に巻きこまれてどういう宿命を背負っているのかしら。呪われているなら祓ってきてもらいなさい。有名な神社があるんでしょ──”

「おいおい、なんだこの物言いは妖怪にでも取り憑かれているといいたいのかよ」

 小柴は御影の気苦労もしらずに手厳しく命じていた。

“でも、それがあなたらしい。サンライズ出雲寝台列車での事件の事後報告、被害にあった田井という男性の一命はとりとめたよう。加害者の上埜という男性はしらばく監獄の中、まぁそれでも田井さんの意識がもどって被害届をださなければすぐにでられそう”。

 御影は文面をみながら下へとスクロールしていった。送信した相手は輪都だったが、小柴が返信してきているのは輪都もいいようにこき使われているのが目に浮かぶ。

 小柴はなんでも知っている。探偵社の中継役になっている強みである。

 列車の中で身元を車掌につたえたことで探偵社にも連絡がはいったのはわかっている。そこで事後報告も探偵社が把握しないとならないため刑事に無理をいってつたわったのだろう。

“追伸──、輪都くんはあなたがいなくてもしっかりやっているからしっかりとあなたも出雲の依頼をお願いします”。

「なんだか、ひと言多いな。輪都がしっかりと、だからこの俺にももちろんちゃんとやるわよね。と発破をかけているのが嫌味でならない」

 自虐を吐露しながら深いため息を吐いた。

「はぁー、明日もプレッシャーがのしかかるな」

 めずらしく御影は探偵として依頼から逃げだしたい気持ちに心がぶれはじめていた。

 

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