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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】16

   

 御影はプロデューサーの意図を汲み取ろうとしていた。

 サンライズ寝台列車で被害者となったクイズ王の田井を手駒として操っていた。

 出雲市にきたのはそれが理由だと感づく御影だったが、そのとき部屋の前で音が…

 そこには由真がいた。由真にとっては衝撃的な言葉をくちにしていたからだ。

 カップの盗難事件の犯人について立ち聞きされた。血相を変えているのはそのためである。

 そこに妹の小夢が現われ部屋に招かれた。

 するとカップの謎に迫ることに──

 

「もしかしたらこの番組の裏では出雲の秘宝を探り当てようとすでに動いている者がいるんじゃないか…」

 窃盗したあとにプロデューサーになる見込みがあったから泉州骨董店を襲った。あと数年その権利もすれば出雲の地で計画を実行しようとしていた。

「そうか、時効も懸念していたのか」

 すでにある企画書を練り、そのタイミングを見計らい時効が過ぎてから表沙汰にする。これを温めつづけてきた。番組企画で達成させるために。

 その裏で動くシナリオもまた隠されているのだろう。

「それで今になったってわけか。田井の頭脳はなくてはならないもの…、これで上埜の疑問が晴れた。罪は罪だが上埜は田井の思惑を悟りきれなかっただけだ」

 上埜が田井から意味深なことを告げた。それをもとめて上埜はここまできて途中退場した。

「待て待て、となると波多薪はいま焦っているはずだ。田井がこの場にこれなかったのは誤算。打つ手なしってわけだ。もしかしたらほかにもまだ仲間が…、いる」

 疑念が残る。わざわざ優勝杯を賞品としているところが気になってしまう。

 このゲームの目的にも何かしろ秘められたものがある。出雲に隠された秘宝を示す秘密があのカップにはある。

「妙なタイミングで依頼がきたものだ」

 そのとき部屋の廊下でキシッと小鳥のさえずりのような音が鳴った。

 昨夜につづき今宵まで、さすがに御影は部屋の襖を開いてみた。

 するとうつむきながら佇む由真の姿が目にとびこんできた。

「どうしたの──」

 御影は由真の異様な雰囲気に声をかけた。まさか愛の告白ではないだろう。そこまでの感情の結び目はない。

 顔をあげるととても険しい顔をむけている。無表情であるがその瞳には強い訴えを放っていた。

「なにかな」

 無言の由真に気負う御影だった。

 依頼人に何かやっただろうか。三日目は中々の好成績だった。明日にはゴールになるんじゃないかとおもうほどマス目を稼いだ。

 残念なのは御影のサブとしてのサポートは何度もあった。しかし立ち止まったイベントはかなりひどいものだった。

 3マスもどる。もどったところのマス目でイベント発生。夏らしく金魚すくいをする。20匹をすくいあげろというものだった。

 ちょっと楽しそう、と御影は口を丸くさせていた。ここ何年か祭りに足をむけていなかったからだ。

 夜の賑わいのある活気に満ちた雰囲気に肌を寄せていないのは日本人ではないと急に胸がざわついていた。

 来週あたりどっかでやっていたら気をむけてみようと、この依頼が終わってからの予定を考えていた。

 由真が金魚すくいをしている姿をみながら浴衣姿が似合いそうだなと勝手に想像していた。

 その想像が浮かびあがるほど、この依頼の終結をみていた。

「探偵さん、ほんとうのことを教えて。気になってきょうは気がそぞろでダメだった」

 由真が不思議な表情になった。初めてみる顔だった。ここへきて由真の表情イコール感情がはじめてみえたようにおもう。

 涙目になっている。瞳がきらきらと星空のように輝いていたのは純朴だからではない。何か抑えきれないほどの悲しみを抱えているようだ。

「やっぱり昨夜この部屋のまえにいたのって由真ちゃんだったんだ」

 由真は深くうなずいた。

「プロデューサーのことをぼそっとつぶやいたのは俺のミスだったな。おもわず…、でもよく聞きとったね」

「うん、あなたの言動は聞き逃さないようにしていた。だって、いくら依頼人のわたしでも教えてくれないでしょ。すべてがわかるまでは…、それが耐えられない」

「由真ちゃんの気持ちはわかるが糠喜びさせて、もしちがったときにショックをあたえてしまうとおもって控えてた」

「わたしはそんなに弱くなわよ。いつも並走しているとおもってたけど、ちがったことがショックだった──」

 そっちか、と御影は合点がはずれていたことに頭をさげた。それならもう少し歩み寄ってほしい。

「すまない。そうだね。チームだったね。わかった話すよ」

 由真は、初めてみせる顔だった。とっても歳相応の優しくかわいらしい微笑に来週の祭りに浴衣姿の由真と一緒に金魚すくいをしたいとおもった。

 

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