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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第10話「味方になりたい」

   

「そうやって一人で戦って、怪我をして……それが本当にあなたの仕事なの……?」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第10話「味方になりたい」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

 私はそう叫んで、セリオの腕を引っ張った。そして、彼が背を預けていた木とようやく対面することが出来た。そっと指先で触れると、一部分だけ人工的に削られた跡があった。やはり、私の予想通りはそこにあった。

「……私達が抜け道を探し始めると同時に、あなたはを持って消えるつもりだった。そうでしょう? セリオ」

 私が削られた木の窪みから取り出したのは、赤い紐が括りつけられた木製の『指輪』だった。子供の指でもはまるかどうかという程度の大きさしかない。恐らく装飾目的で作られたのではないのだろう。

「あ? 何だそりゃ……指輪?」
「多分、この指輪がレッドラットの人間だっていう証明になるんだと思う。これに見覚えはない?」
「んー……まー、あるっちゃあるけど……俺は貰ってねぇからよくわかんねぇな」
「レッドラットの協力者だったとしても、町の出身者じゃないとその指輪は与えられないよ」

 ずっと黙り込んで私の言葉を聞いていたセリオがようやく口を開いた。彼は私の手を振り払うこともせずに無邪気に笑う。

「ヒントを与えた覚えはなかったんだけど、よくわかったね」
「聞こえただけよ。町にいるあなたの仲間の声が」

 私は彼がしたように自分の耳を指差した。

「私、耳がいいんです。とってもね」

 彼は万が一、自分が町へ戻ることが出来なくなった場合に備えて、指輪が奪われないように予めこの木の幹に隠しておいていたのだろう。私達を騙したのもレッドラットへの脅威を減らす為だった。それだけ、あの町を想っているのだ。
 私は静かに口を開いた。そして、先程聞こえた言葉を復唱する。

「――――『それでさぁ、あいつ指輪持たずに一人で町の外に出たんだよ』『ほんと? 門番新人なのに!』『ははっ、無謀すぎるよな』」
「…………」
「何だ、それ……」

 私が今、口にした言葉の意味をわかっているはずなのに、セリオは笑みを崩さない。
 彼は、自ら身を危険に晒して町を守っているのに、町の人間は彼のことを快く思っていないのだ。私はそれが悔しくて堪らなかった。

「今のはレッドラットから聞こえた声です。この『あいつ』というのはあなたのことね?」

 私はセリオを解放して、彼の言葉を待った。彼は少し躊躇うように視線を泳がせて、それから再び私に視線を戻した。

「――――そうだよ。でも、仲間じゃない」
「ええ、そうね。あんなの仲間とは呼べないわ」
「仲間じゃないけど、この町の人間である限り、俺はあの人達を守るよ」
「……そう」

 私は彼の言葉を聞いて、一度考えた後、指輪を差し出した。
 この指輪は、私が簡単に触れていいような代物ではないだろう。彼の覚悟の結晶だというのに、私は感情に任せてそれを暴いてしまった。
 

 

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