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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】17

   

 泉州公和はカップの秘密を解いていた。その秘密を妹の小夢が持っていたことに由真は激昂する。

 姉妹の喧嘩が白熱していくなか騒ぎに駆けつけた両親が由真を叱責していくが―

 秘宝だのなんなのと父親は信じていない。むしろどうでもいいとおもっている。

 しかし、いつのまにか御影と由真には絆が──

 

 カップはすでに泉州 公和の手によって解読されていた。

 その資料はいま御影が手にしているものだ。

 小夢の手中にゆだねられた祖父の想いはわからない。何か一計を案じていたのか。祖父だけにしかわからない危機感を予期したのであれば盗んだ犯人も悔しがっているだろう。

 姉ですらしらないことに御影は少しだけ疑念を抱いたが、なりゆきで手渡されたのであればそれはそれでかまわない。とりあえずこちらに切り札はあるということだ。

 姉妹の諍いは白熱していた。御影は集中すると周囲の雑音さえ無音になる。

 妹を叱咤する由真は目の色を変えて詰問していた。

「由真ちゃん、そんなこわい顔しないでさ──」

 小夢は泣きだしていた。そのバカバカしい姉妹喧嘩に父親と母親が介入して由真をきびしく叱責した。

 度が過ぎた態度を身内にむけたからだ。

 生き仏のような父親がやっと感情を露わにして来客のまえで激怒している。見るに耐えない光景だ。家族の諍いに巻きこまれ、これはさすがの御影も関与できない。もはや銅像になるしかない。

 なにをどんな言葉で叱責されたかわからなかったが、御影は父親が「いいな」と念を押すようなひと言だけは耳に聞きいれた。おそらくこれで姉妹喧嘩は終結するだろう。

 由真は反省していた。肩を竦めてうつむいていた。とても悲しそうな顔をしている。

 人生をゲームに見立ててこんな騒ぎをするなら辞退しろ、そこまでいっていた。

 御影は柱のように突っ立っていた。それしかできなかった。割ってはいるにはこの場でおもいっきり一発ギャグでもしないかぎりおさまりそうもない。

「探偵さんだって、おまえが依頼したからきてくれた。もうこんなことになるならやめなさい。おじいちゃんのことをいつまでも悔やむな。骨董品店も閉店にしていい。おまえがすべてを背負うひつようはない。終わりにしろ」

 きっと公務員の父親はこの町を築くがわにいる。だから娘がテレビ番組に出演していることはよくおもっていないのだろう。

 保身のために祖父の残した店に関わる娘が不憫でならない。そう思って口を噤んでいた。

 何かしろのきっかけで御影との依頼を帳消しにしようとタイミングを計ってさえいたかもしれない。

 これは由真の独壇場の依頼であるとはじめてわかったきがする。

 それでも由真は止まらない。それは御影もすでに同じ気持ちだった。依頼料とかではない。探偵社から帰社命令があっても御影の心はとどまり解決しないかぎりもどることはない。

「やるから、わたしは最後まで…、カップをこの手に取り戻すまで」

 由真の強固な信念は揺るぎないものだった。探偵にちらっと潤んだ瞳をむけた。すると御影は応えるように唇を結びうなずいた。

 父親はその両者の見えない淡い絆が見えてしまった。

「勝手にしろ。でも姉妹で喧嘩だけはするな」

 母親は黙っていたが厳しい顔をしていた。

 小夢は姉をきつい目でにらんでいた。

「二人とももうそのへんで、仲直りな」

 二人だけがのこったことで御影が割ってはいる隙がうまれた。もっともこんな不始末に関わるのは勘弁だった。どういうわけか第三者の御影の言葉に姉妹は耳を貸し、姉妹はたがいに見つめ笑みを浮かべていた。

 さっきまでのいがみあいが嘘のようにふきとんでいた。

 場が沈静下したことでいま一度御影は貴重なカップの資料をその眼でしっかりと活眼としてみた。

「それで探偵さん、肝心な話をまだ…」

 由真は御影に近寄り顔を寄せた。

「プロデューサーのことはまだ内密で頼む。確証はあっても時効かもしれない。それにまだ調査中だから」

「調査中って、だれが…、探偵社の方がしらべているの」

 上目づかいをする少女の不安そうな表情に、御影の心情ははずんでいた。やっぱりよくみると美人である。

「突きつめてカップだけでも奪い返せるならそれでいいでしょ」

 由真は納得しない顔をしていたが、おそらく妥協したように承服した。

「わかったら教えてね」

「うん。明日か明後日には決着をつける」

 御影は自信が篭もったような声で由真に告げた。

 

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