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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】18

   

 御影と和史は前村を尾行する。

 山の奥へと進む前村の行動にますます疑惑がふくらむ。

 御影は和史に出雲にいまなにが起きているかを説明した。カップについても話し進めていく。

 出雲の秘宝の存在の有無を問う。

 和史は本当に信じてこの場所に集まる者が宝探しをしていることに驚いていた。

 前村が車を止めてリュックを背負いシャベルを手にして山奥へと足を踏みいれていくが──

 

 前村帆樽が運転する車は山奥へと走っていた。途中舗装されていない獣道にはいるとテールランプが赤く光った。少しスピードを緩めたようだ。

「どこへ行く…、安全運転できづかれないようにお願いします」

 御影は助手席でぼそっといった。

「探偵さん、あんた前の車のひとを追ってどうするんで──」

 御影は答えようがなかった。前村がいったい何をしようとしているのか。憶測でしかない。その結果をみようとしている途中だ。

「娘さんが探しもとめているカップの秘密についてご存知ですか」

 和史は眉間に皺が集まった。無頓着な話に耳を傾けないタイプらしい。祖父だけは使命感をもって護ってきた。堅実タイプの公務員に就いた和史は背をむけてざれごとを信じている祖父をみくだしていた。

「いや、それはまったく…」

「そうですか。それがもし本当だったら?」

「えっ…」

「かなりのひとが出雲の秘宝をもとめてこの地におとずれています。まさに目の前の車の人物はその一人ですよ」

「まさか──」

 父親は本気で信じて探している者が一人でもいることに目を丸くさせ瞳が落ちそうだった。

「前をむいて運転してくださいよ」

 気が済むまで娘のことを放置していた。祖父想いの娘だろうとそれが親がだした答えだった。

 真実はそうではなかったということだ。

「探偵さん、本当に…、その…ひ、秘宝というのは、あるんですか」

 あるといえばある。ないといえばない。

 こんなありきたりの答えでは探偵としては商売はあがったりだ。

「あの、娘さんの気が済むまででいいのであれば見守っていてください」

 親心はいつだって子どもにはとどきはしない。だから見守ることがさだめである。

 唸りながら和史は顔をハンドルにうずめた。

 眉の端がさがる御影は苦笑していた。ふと視線を前方にむけると前村が懐中電灯と小さめのシャベルを手に握りしめリュックを背負っていた。

「こりゃ、ついにあやしくなったな」

 見るからに軽装ではあるが発掘調査のような格好にみえてくる。

 御影の眼に火が灯った。それはカップの地図を知り得た者の行動である。

「どうやらあの地図の在処をつきとめようとしている」

「あんな若い娘さんが宝探しをするなんて…」

「女は金の亡者ですよ。もちろん強欲主義は女だけではないですが…」

「そうやな。うちの娘はそんな金に執着はない。なんか悲しくなってくる──」

 前村はどんどん先へと進んでいった。

 御影は心臓が弾んだ。もしあのプロデューサーからカップの地図を現代的に解読できているのであれば、前村は出雲の秘宝を掘り当ててしまう。

 この選択肢を考えていなかった。由真はカップが戻ればいいのだろうけど、出雲の秘宝を奪われていいのか、それをたしかめていなかった。由真はどうおもうか。

「いや、カップと秘宝は文字どおり表裏一体だ。奪われていいものではない。きっと祖父はこの秘密をまもってきたんだ。だからカップを手中にしていた。古びた骨董店は、“だいじな枝を隠すための森だった”というわけだ」

「森とは紅葉ですか、それならこのあたりは見ごたえがありますね」

 由真の父親は意外とユーモアがある。夏が過ぎれば秋だから。

 昔の地形と地名は現代と異なっている。だから小夢の部屋で見た古めかしい手書きの地図ではピンとこなかった。

 祖父も現代翻訳にして孫にゆだねてくれれば前村に先をこされずにすむというものだ。

「このことを知っているのは前村ただ一人じゃない。だれかの指示を受けてここへきている。だがいまはゲームの真っ只中だ。一人でゲーム中に調査しているのは、あのADの大葉が盤上で由真同様に闘っているということだ。前村は自分の仲間にもしらせていないのかもしれない…、となるとプロデューサーとつながっているのは明白だ。いくら番組を盛り上げようとしているとはいえ、ADの大葉と組ませている時点でその疑いは拭えない」

 すでに太陽が真上に到達して燦々と陽光を地上へとふりそそいでいた。

 うなだれるような夏の暑さに疲労困憊している前村の姿を遠目で観察していた。

「探偵さん、わたしはそろそろもどらないとならない」

 和史は職務中であったことを御影に躊躇いながら告げた。

「そうでした。すみません、つきあわせてしまって」

 御影は一瞬だったが前村のほうに視線を留め思考をめぐらせた。和史は下山するようにいった。

「あんたはどうするんだ」

「心配はご無用。車はもう一台そこにあります。あれで一緒に下山しますから」

 前村に直撃するつもりでいるとわかると、あまり深い入りしないよう忠告する和史はそのまま後腐れなく早々に下山した。

 ひとり残った御影は樹木の陰に隠れながら微笑んでいた。

「今夜は由真ちゃんにいい土産話ができそうだ」

 

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