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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】20

   

 最終日となるクイズゲームの朝がきた。

 御影と由真はそれぞれの道をたどることになる。由真にとっても苦汁の選択だった。

 だが、それでも御影はゴールをさせない道をえらばせた──

 クイズゲームが再開されたが御影は外にでていった。先日の秘宝探索のつづきを再開するからだ。

 会場の外にでるとある人物が御影を待っている。そして秘宝の在処について驚くべき真実を御影は語るのだが──

 

 おそらく最終日となる五日目の朝は何かを引きずるような重みを体は感じていた。

 昨夜の由真との仲違いにちかい諍いは、御影の提案に由真の感情がかき乱されていた。それでも御影は押しきった。

 最善は御影の意見であると言い放った。

 由真はこぶしと唇を噛みしめてぶつけようのない感情をこらえて自室へともどった。

 やはりこんなかたちになってしまったことを悔やんでいたが御影なりの由真へのためだった。その気持ちがつたわらないのが歯がゆくてしかたがないが、これもしかたがないことだ。

 二人がめざすゴール地点が、手前でY字交差点を歩かされているように反比例している。

 会場の個室に入ると数十分後にゲーム再開のコールが司会者の筑縞の進行ではじまった。

 由真の視界カメラからのぞく視野はずっとうつむいていた。

 昨夜、信じられないほどの形相で御影と論争が勃発するところで圧し留めた由真は、いまにも暴走しそうなほど地面を蹴っているのが画面の下部で見切れている。

 姉妹喧嘩があったばかりだというのにこれまで依頼者と探偵のあいだで喧騒するのも日常茶飯事。御影にとっても場をおさめるのは一苦労だった。そこは利害の一致が最優先される。説き伏せる抗弁はお手の物だった。

 御影はそのまま個室をあとにした。会場を出ると人気のない場所で前村が車を待機させながら待っていた。

「遅いわよ」

 仏頂面している前村に御影はすばやく歩み寄り、すまないとひと言つけくわえた。

「行くわよ、秘宝探し」

「わかっている。これで億万長者だな」

 御影は悪意に満ちた顔で笑ってみせた。

 前村の運転する車に御影は助手席に乗りこんだ。二人は先日の山奥で出会った場所までくると、御影はくちをひらいた。

「ここじゃないよ。もっと奥だ」

「どうしてそんなはっきりとわかるの」

 前村は不思議そうに助手席をちらちらと目を動かしていた。

 山道は決して舗装されているわけではない。斜面のある山肌に転げ落ちるのは勘弁だ。

「こちらでも入手した地図がある。これは秘宝の地図を知る人物が手書きで記したものだ。完全解読された地図だ。それと前村さん、あなたがプロデューサーから手渡された地図はカップに記され隠されたものだ。あなたがこれで探してもたどりつけないのはカップの地図をたよりにしているからだ」

 前村は黙っていた。

「俺はこのふたつの地図の位置関係を照合させてもらった。すると少しばかりずれている。前村さんの手渡された地図は現代の地理ではないということだ」

「現代の地理ではないって──」

 先日も前村の運転する車の助手席に乗せてもらい下山した。そのときにプロデューサーからメモを手渡されたことをおしえてくれた。そのメモを御影にも見せた。すると携帯電話のカメラ機能で撮影した。

 前村は運転に気が逸れた。はっとした顔のまま前を向いているのにハンドルを握る手のちからが抜ける。

「ちょっとハンドルしっかりと握って」

 山道の荒れ道に大きく車体が揺れた。

「ごめんなさい。でも、わたしが手渡された地図は正確じゃないの」

「そのようだ。だからいつまでたってもポイントをつかめない。この地図に記されているポイントを探してもたどりつけないわけだ──」

 冷静さがもどったように前村の運転は安定した。

「そうね、困っているところにあなたが現われて…、でもプロデューサーは最新鋭の機械を使って地図を解析したっていっていたのに」

「地図ばかりたよりきってしまって記されていたカップ自体の隠された秘密までは解き明かせなかったのだろう。どんな想いで“当時のひとたち”は記したのか、それは機械では解析できないってわけだ」

「どういう意味よ、当時のひととか、想いって…なによ」

 御影はフッとほくそ笑んだ。

「要するにあなたが手渡された地図は正確なものではないってだけのこと、それでは解読は不可能なんだよ」

「はっ!」

「むかしの技術で刻まれた道しるべの地図は目印程度にしかならなかったということだ」

「目印…、それじゃ…今の地理はずいぶんと変わってしまってどこにあるのかわからないじゃない」

「そうでもないさ。カップには地図以外にも刻まれていることがあった。おそらくそれをしっかりと解明できなかったのが、そちらがみつけられずにいた原因だろう。秘宝の地図に目がくらんでしまったのか、本質を見抜けていなかった。それだけだ──」

「そ、そんな…」

「そもそも波多薪プロデューサーがどういう人物なのか、知っているのか?」

 御影はもったいつけるようにいった。

「プロデューサーはプロデューサーでしょ」

 目をとじながら御影は首を小さく左右に振りながら失笑した。

 

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