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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】21

   

 司会者の煽りからクイズゲームははじまった。あと5巡以内でゴールする者がいると言い切っていた。

 なにもわからない状況に駒は苛立ちをおぼえていた。

 そんなおり由真に神が微笑むようにゴールへと歩ませてしまう。

 由真はいま一人で葛藤していた。あと一回でゴールになる可能性があるからだ。

 御影の策を信じてゴールを拒否するべきか、それとも目先のゴールにたどりつきカップを手にすべきか、誘惑に揺れている──

 

 由真は妙にじっくりとゲームへの気持ちをむけていた。焦るわけではないが、やりきれないおもいはサイコロをもつ手が震えているほど、ちからがはいっているのがわかった。

「おそらくあと5巡以内でゴールする者がいる」

 司会者の筑縞が厳かな声で静かにいった。それがいったい誰であるかはわからないままだが、参加者の不安を煽り立てる発言に怒りの目をむけていた。

 それはタブーではないか。5巡以内で終わりそうもない者はそれぞれ計算して答えをだしている。そうなれば必然と自分ではないと結論をだして気が抜けてしまう。盤上から走り去り逃げてしまう衝動すらこみあげていた。

「最後までやりきるのだ。それがこのゲームのルール。そして醍醐味である。単純な計算での話だ。昨日までとはちがう。今日は今日の風が吹くように、どうなるかはゴールにたどりついた者ですらわからない。それが人生だろ」

 筑縞はこれまで以上の司会者っぷりをみせていた。観客は賑わい、参加者もあきらめることはなかった。むしろ鼓舞され昂ぶっていた。つまり昨日までのルールではない。サイコロもそうだ。そして進行するマス目も天と地ほどのイベントを課してくるだろう。

 会場にいる観客はその行方を見守っている。だが他言無用であった。

 もし他言したりSNSに掲載したばあい、その人物は即刻退去となる。応援している駒も脱落となり失格。

 たとえ縁がなくてもこれは起こりうる事象のため観客も駒の人物が誰であるかわからないよう駒を覆うように目隠しがされている。

 駒は色分けされて応援したい者を事前登録しているが、駒の情報はまったく得られない。

「みんなとうぜんゴールを目指そうとしているのに、わたしだけ後ろむきなんて、探偵…この決断はほんとうに信じていいの」

 由真は探偵の策を果たすためにこのゲームをゴールしてはならないと告げられた。

 奥歯を噛みしめながらパッと手を開いてサイコロを適当に抛った。

 やはり神は御影の策ではなく由真に微笑んでいる。もしくはあざ笑っているのかもしれない。

 出た目がこのサイコロの最大目である15だった。そして立ちどまるマス目のイベントは5マス進むだった。

 残りは13以上のサイの目が出ればゴールとなる。

「えっ、5巡とかいっていたけど、次でゴールになる可能性がある」

 由真は唇が開くか開かないか薄い隙間から声が漏れていた。まだ誰もゴールへ近づいている気配はない。ゴールになったときどんな終幕になるのだろうか。それは聞いていない。司会者がゴールした者に称賛するかもしれない。

 その名を告げることもなく優勝賞金と賞品のカップを手にしてここから誰にも知られずに立ち去るだろう。

 そうなったらもう二度とカップの行方はわからなくなる。

 由真は顔をブンブンと振った。優勝を目の前にしていること、御影の策に縛られていること、どちらを取るべきか頭の中で渦巻いている問いに答えがでそうになかった。

 つぎの1巡がまわってくるまえに由真は結論をだす。

 

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