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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】23

   

 洞窟に侵入した御影と前村は出雲の秘宝の在処へと歩みをはこんでいた。

 御影は暗闇の中で薄ら笑いを浮かべていた。だが秘宝の在処は中々たどり着くことはできない。

 その分、前村は不安をつのらせていた。

 無駄に洞窟内をさまよう二人は御影にとって時間稼ぎであった。

 そして折り返し洞窟の入り口にもどると、そこには──

 

 御影と前村は洞窟内を捜索していた。懐中電灯を片手におぼつかない足元のごつごつした地面に不安がせりあがる。

 入り口から三、四人が一斉に入れるほどの空間がつづいている。奥までかわらない空間がのびている。どこまでつづいているのかわからないほど暗闇がのびていた。

 前村にはわからないが御影には見えていた。すぐ後ろに前村の息づかいを感じながらも前方を照らす光は鈍っていることをまだ彼女はしらない。

 この洞窟に隠された秘宝がどのくらいの価値があるか、おそらく数百億円という単位にはなるだろう。

 もし、本当にあればの話だ。いや、まだあればの話だ。

 洞窟の薄暗さが御影の表情を隠していた。前村はどこまでも深く入りこんでいく探偵の勇敢さに腰がひけていた。

「まだ奥へいくの、どこまでいくの」

「洞窟が隠し場所のポイントであるのはわかっていた。だが、そのさきの道は記されていない。まったくの未知だ」

「こんなときにシャレのつもり、道は未知って…、なんなの」

「まだ頭ははっきりとしているようだね。他人の愚鈍な言動に気がかりを示すとはね」

「あたりまえでしょ、まったくこれじゃ秘宝なんて本当にあるのかしら。不安になってきた」

 前村は御影の背中の余った衣服を掴んだ。

「ちょっと、掴まないでよ。恋人と勘ちがいされるよ」

「だれに勘ちがいされるのよ、こんな洞窟の中で…」

 御影は一瞬、間をおいてからいった。

「洞窟の主か、精霊か、もしくは魔物とか」

「稚拙なあざけりね。やんなるわ」

「そうですか。すみませんね、気をまぎらわせようとしたのに──」

 御影はこの調子では秘宝なんてみつからない。そう核心していた。やはり秘宝を探すのとペット探しでは到底度合いが異質である。トレジャーハンターでなければこのさきを踏みこんでも無意味に終わりそうな空気を感じていた。

 洞窟の空気はひんやりとして肌がじとってしている。それだというのに夏の暑さは感じないが額や首まわりや脇ににじむような汗をかいていた。湿度が高いのが実感できる。

 あてもなくさまよっているわけではない。御影はあるあぶりだしにかかっていた。きょうは秘宝をみつけるつもりはない。だが決着はつける。

 前村がキーマンにいつのまにかなっていた。そのための餌である。ハイエナが寄ってくるの待つ。時間稼ぎにすぎない。

「どこまでいけばいいわけ」

「またおなじことを…弱音は禁物だよ。そんなんじゃ見つけられるものも見つからない」

 このやりとりがしばらくつづいた。しかし御影が怒ることもなければいたって冷静だった。不安のかけらもない。堂々としている。

 前村にはそれが不自然におもえてならない。

「いったん引き返しましょう」

 御影は“よしきた”と心の中でガッツポーズをとっていた。

「そうか、まぁ、こんなところで休憩するのも気が滅入るよな。いったんもどってからどう進むか考えようか」

「ええ」

 前村は少しほっとしたように息を吐いた。

 きた道をもどるのはどこかつまらなかったが、御影はカップの隠された場所をみつけた。

 前村がいないところですべてを掻っ攫う。途中であきらめてもらえたことに御影はこぶしを固めていた。

 おそらく前村は不安という二文字が支配している。そこにつけいる隙がある。

 前村も出し抜くためにうまく誘導できるようにできればいい。このまま下山してもらいたい。

 誰もいなくなったら明日にでもふたたびこの洞窟を単独調査する。そんな御影のたくらみを尻目に前村はうつむき意気消沈していた。

 顔を前方にむけるとちいさな光が差しこんでいた。

「はぁー、出口だ、入り口か」

 御影の気の抜けた声は洞窟の壁に反響していた。

「どっちでもいいわよ。もどってきた」

 肩の力を抜いたのは前村もおなじだった。声も少しはずんでいた。

 暗い洞窟の中で過ごせるほど人間は闇に慣れていない生き物であると身にしみた。

 まぶしいほどの光が顔に直撃して目がくらみそうだった。しかし、光が晴れると数体の影がとびこんできた。

 

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