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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】24

   

 御影は秘宝の隠し場所に波多薪らを案内することになった。分の悪い状況に致しかたがなかった。

 御影は波多薪が手にもっているカップがニセモノだると気づいていた。

 由真が優勝しても祖父が所有していたものではないことを承知していた。悲痛な顔をみさせたくない。

 あえてゲームの棄権を告げた。これは御影が依頼を完遂するための助言である。

 屈強な男たちは7年かけて出雲の秘宝を追い求めていたというのに、探偵がここ数日でその在処を探り当てていることに不信感を抱いた。

 だが波多薪はそんな仲間たちを愚弄し、そして──

 

 御影は身の危険が及ばないために知っていることを話すことにした。

「この洞窟に秘宝の隠し場所がある。秘宝もそこだろう」

 男たちはくすっと微笑んだ。

「案内してもらおうか。探偵」

 御影は隠し場所の目星はつけていた。さきほど前村と洞窟内をさまよったとき、すでにその場所を目測していた。

 それをみすみす素直に話すつもりはない。

「地図のヒントはこの洞窟を示していた。それだけだ。あとはこの洞窟内をしらみつぶしに探す。そこまでなんだよ手がかりは」

「なに…そんなことで納得できるわけなかろう」

「昔のひとが作った地図だ。詳しく書くひつようはなかった。当時のひとたちにだけがわかるような目印にしていればいい。後世にのこすつもりならもっと詳しく書いているはずだ。そうだろ!」

 御影の問いかけに一理あると押し黙るプロデューサーたちだった。

「ここからはしらみつぶしにあたるしかないですよ」

 屈強の男の一人が波多薪に耳打ちした。

「かならずこの場所にあるんだから、ここからは時間をかけても問題はないはずだ」

 別の男が意見した。同等の立場の口調で話す者もいる。この六人の関係性がみえてくる。

 一人は口調からして対等な立場な者、ほかの三人は年下か部下のような者、最後の一人はいまだ話していないが声を聞いていないくらい大人しいタイプなのだろう。

 六人がそろっていたら御影に好機はめぐってこない。こういうとき由真のくじ運のような幸運が欲しいとおもった。本当なら優勝していたかもしれない由真の幸運が御影にはない。

 プロデューサーの手に持つニセモノの賞品を一瞥した。

 手にとったときそれがニセモノであると由真なら気づくはずだ。その悲しい顔をみたくない一心で棄権させた策でもある。

 賞品となったカップはあきらかに人為的に作られたように美しい輝きを放っていた。

 つまり銅版に金メッキを貼り付けただけのもの。磨きに磨いて放つ輝きが本物のカップからはでない。形状を壊さずに黄金のカップを輝かせるのは出雲の秘宝への在処となるヒントを消すようなもの。ぜったいに手を加えたりはしない。

 プロデューサーが手にもっているカップは、由真が写真でみせてくれたくすんだ色のみすぼらしいカップだった。

 トレジャーハンターごときでは贋作を作りあげることはできないようだ。せいぜい番組の小道具どまりがいいところだろう。

 由真の目が曇っていたのは興奮していたからだ。それからというものおそらく直視せずになりふりかまわず手にいれたい。それだけで直進していったのかもしれない。特にテレビや雑誌で映されたカップではわかりずらいものである。

 猪突猛進の彼女の性格が仇になっただけのこと。策を講じてやればかならず取りかえせる。

 相手がさらなる上策で御影を待ち伏せていようとはおもわなかったが、それだけのことだ。

 御影の策がつうじない相手に逃げ場を失った。この山奥の洞窟があるという説明をいっさい誰にもしていない。由真にも、その家族にも。誰も助けにはこない。

 御影は最後の策として隙をみて逃げる。洞窟の薄暗さにまぎれて退く。それしか打開策はなかった。

「しかたない、ここからは全員で探すぞ。おそらくそれらしい形跡があるはずだ」

 波多薪はもっともらしく口火をきった。

「それらしいって、さっきはそんなの見あたらなかった」

 両腕を組んでうんざりしている前村だった。とんだ貧乏くじを引かされたようで憤慨の色が顔からにじみでていた。

 洞窟の入り口で足止めされていた。あとは出方しだいだった。闘うか逃げるか、一瞬の見極めがひつようである。

「さっきは二人だったからわからなかった。でも今度は8人だ。見過ごすこともないだろ」

 御影はあえて策を講じた。このまま引き止めて一日じゅう洞窟でさまよってもらいたい。自分は闇にまぎれて隙をみて逃げる。

 山を降りたら御影はこの男たちに拘束されもっと身動きできない状況になってしまう。どのみち最悪な道筋しかない。

「あの、俺たち全員が入りこまなくても半分はのこっていたほうがいいんじゃないですか」

 屈強な男たちは投げやりな態度に一瞬で変わった。

 この夏の暑さがつづくなか洞窟内のひんやりとした冷気は背筋を凍てつかせていた。

「どういうことだ…、トレジャーハンターがさきを歩まないのはおかしいだろ」

 静かな口調だったがプロデューサーの怒気が増した。

「……」

 黙っているトレジャーハンターの仲間は、けっして結束した間柄ではない。御影はつけいる隙があるのはここなのではと眼にちからがはいった。

「なんとなくだが、納得いかないことがおおいようにおもう。その探偵もそうだが、俺たちの計画はもう7年ちかく経ってもまったく可能性は見いだせていない」

 ずっと黙っていた屈強な男の一人が否定的な意見をした。

「なにがいいだい」

 プロデューサーがにらみつけた。

「ここへきて、なぜかこの探偵に誘導されているような気がしてならないんだ」

 屈強の男の癖に直観力といざというときに弱腰になるのは、ハンターとしての動物的感のようなものだろうか。御影はこの屈強な男たちはただの木偶の坊ではないと悟った。

「なにを怖じ気づいているんだ、おまえらしくないぞ! このケダモノのくせに!」

 波多薪の言い草は獰猛な珍獣を操るサーカス団長のようだった。

 前村はぺたりと座りこみ、またこの洞窟内を入ることへの抵抗の意志をみせていた。

「気をとりなおしていくしかないだろ。いましかない。一度山を降りたらどこでどうなるかわからない」

 プロデューサーの含みのある言いまわしは町にいけば、前村や御影が逃亡の畏れがある。

「そんな厄介なことはまっぴらだ。逃げるくらいならここにとじこめてしまおう」

 御影は蒼白な顔色になった。

 

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