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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】25

   

 鍾乳洞にたどり着いた一行はこの場所が出雲の秘宝の隠し場所として分散して探しはじめる。

 御影にとっては逃げだす絶好のチャンスでもあった。

 幻想的な鍾乳洞ではあるが、この場所に宝はないと御影は断言している。だがそれを聞き入れるだけの耳をもちあわせていない。

 どの道、御影はこの場を立ち去ることが唯一の方法であると機を狙う。

 そして意外な決断へと──

 

 しばらく歩くと頬にかすかな風が撫でたように感じた。

「空気が動いている」

 御影は、じめっとした洞窟内のかすかに清々しく新鮮な風の匂いを感じとっていた。

 同じ横幅、同じ背丈の洞窟を歩いている。懐中電灯は誰も手放していないのに前方でやわらかい光がぼんやりと揺れていた。

 まるで人魂のような揺らめきだった。

「おい、なんだ…」

 しかし誰も臆することなく、むしろ好奇心が湧く立って足は軽快に進んでいた。

 御影にとっても洞窟内は未知である。予期しないことが突如として起こるものだ。

「なんだここ!」

 波多薪たちの驚く顔に疑問視していたが、御影も固唾を飲んでいた。

 眼前に広がる光景は神秘的だった。地下水が溜まり円形のような空洞が広がっていた。そして天井から逆さに細く鋭く円錐のような形状のものがさがっていた。

「これは、鍾乳洞か」

 波多薪の声が響いた。誰の目でも一目瞭然だったが改めていわれると感動をおぼえた。

 御影ははじめて自然がつくりだした芸術的な景色にぼう然としていた。

 地下水の水面を凝視すると透きとおっている。どこからか明かりが水の中を反射して、この水溜まりまでとどいている。そしてこの空洞内を魅了させるほどの幻想的な光景を演出していた。

 とてもきれいなブルーの光沢が空洞内を照らしていた。それは水面の波打つ揺らめきと同じで、空洞の壁面をブルーの光沢が揺らいでいた。

 誰の指示でもないが、おのおの手に持っていた懐中電灯の明かりを消していた。顔や体にも水面のゆらめきの淡い光が全員を照らしていた。

 十分に視界は晴れてきれいだった。

「出口が近いわけではない。水の中を反射してこの地中深いところまで射しこんできているんだろ」

 波多薪が水面をのぞきこみながらいった。

「それでもほかに入り口があるってことだ。宝があるとしたらここじゃないか──」

 屈強な男の一人がせかすようにいった。するとほかの男たちも核心を得たようにうなずきあたりに散った。

「ここの場所に隠されているんじゃないか」

「出口も近いんだろ。むしろそっちから入るのがセオリーで、俺たちが入ってきた道はもしかしたら囮なんじゃないか。秘宝をみつけられないために」

「でも、たどりついた。そういうことでもないのかもしれない」

 屈強な男たちがおのおの推測を立てて話していた。

「うーん」

 波多薪の唸り声に誰も耳を貸す者はいなかった。

 御影はこんなくだらない推測に耳を貸すことはなかった。すべてが徒労の推理だからだ。

 そしてついにタイミングがきた。隙を生じさせるのに絶好の好機がめぐってきた。全員の思考と監視と行動が散漫になっている。猫の足のように逃げるのは定石である。

 波多薪が提案をした。

「よし、ここで捜索開始だ。いいか何かでたらすぐにしらせろ。探偵や前村、おまえたちも手伝えよ。逃げてもしかたがないことぐらいわかるよな」

 前村は頭を左右に振りながらも応じた。

 先手を打たれた。御影は無言でうなずいていた。

 だが波多薪の拘束的な言葉に強制力はない。逃げてもしかたがない。そんなことはない。逃げれば一網打尽にできる。御影の策はこの場を逃げることだ。

 なぜならこいつらは窃盗団。逮捕され悪事を調査されるべき一団だ。

 悪質なトレジャーハンターとは周囲の迷惑や身勝手きわまりない行動にでて利得を得る。そういう輩だ。

 左右へと分散され気だるそうに前村は岩のうしろや壁に手で撫でてみたりとそれなりにしらべている。

「意外と真面目だな、秀才がゆえの妥協できない性分だな」

 これほど過酷な状況で御影はこの光景を視野にいれただけでも危機感しかない。

 おそらく未開拓の鍾乳洞ではないのか。カップの地図には記されていたが、現代の地図では鍾乳洞があるとは記されていない。

 インターネットで検索していた。地理から何か詳細な情報はでないかと思慮してみた。

 出雲、山、洞窟、そしてこの土地名もいれたキーワードから検索されないわけがない。誰かしろ物好きな登山家、もしくは歴史好きな学生がブログやSNSで記しているのがヒットするだろう。しかしまったくなかった。

 町の観光名所にもなりうる鍾乳洞。出雲市の役員が売りに出さないはずがない。これは名物になるはずだ。それがまったくどこを探してもインターネットには一文字もなかった。

 由真の父親が役所に勤めている。無口な男だが、観光名所ともあれば、共に山へ前村を追尾していたときにこの洞窟と鍾乳洞のことをくちにしないわけがない。

 ここの存在をしらないのだ。

 

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