幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

現代ドラマ

決して許さない 第二回 いばらの道

   

明彦は家族団欒の暮らしを引き裂かれ、心の傷が癒えないまま高校受験の日が近づいてきた。

母に「お母さん、僕はお寺で頑張っています。」と決意を伝えるハガキを何度も書いたが、1通も返ってこない。

「どうしたんだろう?」と不安なまま受験し、実力を発揮できず、合格を逃してしまった。

落ち込んだ明彦だが、住職に「焦ることはない。一年遅れようが、二年遅れようが、気にすることはない。『人間万事塞翁が馬』と言うじゃないか。しっかり勉強すればいい」と諭され、ようやく新しい気持ちで再出発を誓っていた。

一方、母親の雅代は、屈辱的な「囲われの身」、しかも、「明彦は立派に高校に合格した」と偽造書類を見せられ、恥ずかしい行為を要求されていた。

それでも、雅代は「いつの日か、きっと、きっと明彦が助けに来てくれる」と信じて疑わなかった。

 

 
試練の時
 

住職を信じ、頑張ろうと誓った明彦だが、まだ15歳。家族団欒の暮らしを引き裂かれた傷は簡単には癒えない。

頼るのは、やはりたった一人の肉親、母の雅代だ。

「お母さん、僕はお寺で頑張っています。」と自分の暮らしを知らせ、「毎朝5時に起きていますが、眠くはありません。」、「お経も覚えようと思いますが、今は勉強です。」と元気に頑張っている、そんな様子を母親宛に毎週ハガキを書いた。ところが、1通も返ってこない。

勿論、金山が正しい住所を教える筈がない。彼が教えたのは金山の持ち家だが、雅代がいる家とは別のもの。「金山様宅、朝井雅代様」と書けば、間違いなく宛名住所に届くが、雅代の手には渡らない。

そんなことを知らず、「明彦、偉いわね。お母さんも頑張らなくちゃ!」という便りを期待していた明彦は寂しさと苛立ちが募ってきた。

それでも、「お母さん、病気でもしたのかな?」と母親を気遣っていた。しかし、次第に、「ハガキは本当に届いているのか?」と、教えられた住所を疑うことから、「僕のことなんか忘れてしまったのか?」と疑うようになってしまった。

こんな精神状態で迎えた高校受験である。

集中出来ない上に、東京都から岐阜県に変わった環境変化──模擬試験は一度も受けてない──が影響し、明彦は力を出し切れず、受験に失敗してしまった。

どん底に突き落とされた明彦に、住職の妻、京子は「お金が無いんだから、ちょうど良かった」、修行僧の高尾は「ふん、よっぽど頭が悪いんだ」と、慰めの一言もない。

だが、住職の児島慶海だけは違った。

母屋の自室に明彦を呼ぶと、茶菓を出して気持ちを和らげると、「焦ることはない。一年遅れようが、二年遅れようが、気にすることはない。『人間万事塞翁が馬』と言うじゃないか。しっかり勉強すればいい」と諭すように話を続けた。
 

 

-現代ドラマ
-, , , ,

シリーズリンク

決して許さない 第1話第2話

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

  1. 丸山 利子 より:

    前回の鈴子のしなやかな京都弁から、今度は意地の悪い高尾の行動、作者の幅広い表現に、流石!と感心しています。今後の展開が楽しみです。

     

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品