幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】27

   

 御影は波多薪を追いこんでいた。

 出雲の秘宝を先にみつけられていたことに憤慨していたが、横取りする気迫で御影に迫る。

 さらに御影は出雲の秘宝の在処についてカップだけでは解き明かせない謎を、骨董店の前店主が孫娘にゆだねていることを知ると憤怒する。

 そしてふたたび冒険魂に火をつけた。

 御影は波多薪が手に持っているカップをかすめとる。そして台座の裏面を目の前に突きつけると──

 

 力みすぎて波多薪は掴みかかろうと手をあげたがおしとどめた。

「それはそれでいい。前村がいったようにカップの隠し場所はどこなんだ」

 知っている、知らないというだけで起死回生の転機が御影に降った。

 隠し場所がわからない波多薪は空気が抜けたように気迫がしぼんでしまった。有利なのは御影に風が吹きはじめていた。

「あなたのその手に持っているカップだが、台座の裏のところに地図が刻まれているだろ」

「どこかにカップの記述でもあったのか」

「骨董屋の前店主が孫の妹に手書きの地図や資料を手渡していた。つまり、あんたが欲しがっていたカップの翻訳された資料だ」

「なに!」

 波多薪はカップを盗難したあともっとヒントらしきものがないか再訪したことがある。しかし店主が亡くなって閉店していた事実を知るとふみとどまった。

 孫の姉が経営を継いでいたことがわかったが防犯カメラが取り付けられていることにきづくと引き返した。

 そんなおり、駒として手にいれた前村に接近した御影が謎を解こうとしていることを知り、冒険魂に火がついた。

 これで出雲の秘宝が拝めると。

「くそっ、そうだったのか」

「前村からきいたけど大まかな場所を手当たり次第に一人で探させていたところに俺は遭遇して話をきいたが、波多薪さん、あなたも田井のような若い頭脳を手駒にしてゲームの主導権を得ようとしていたが、詰めがあまかったな」

 御影はそういうと波多薪の手からカップをかすめとった。

「おい!」

 カップの台座の裏面をみせつけた。

「ここに秘蔵の地図が刻まれている。無知な者には単なる模様にしかみえないだろう。どうやら骨董店の前店主はここに刻まれている秘密をまもろうとしていた。そのために陽のあたるような明るい内装にせず、古くさいまま埃がかぶさるように隠しつづけてきた。あんたみたいな者にきづかれないためにだ。だが運悪くそのときがきた。ハイエナが嗅ぎつけたわけだ」

 波多薪は鼻で笑った。

「前店主が現代の科学をもってしても解けないと踏んでいたのだろう。だから孫の妹に秘宝の秘密である解読資料をゆだねた。そこに記されているものこそが出雲の秘宝の謎だ」

「おい、探偵…出雲の秘宝の謎を解いたということは、その宝もどんなものかわかっているのか」

 波多薪は目玉をでかくさせてゆっくりと声にだしていた。

 期待しているのだろう。御影がすでに出雲の秘宝の正体にたどりついたという期待を。

「あんたはなんだとおもっている」

 その存在について御影は聞き返した。

「俺は勘だけどな、こういうことはおそらく大昔のこのあたりの武将や出雲の古い家城の頭首がひそかに隠した金塊だとおもう。金塊数百キログラムとか、時価にして数百億──」

 そこで不敵に微笑む波多薪だった。理想が膨らんでいる者がみせる顔だった。

 こんどは御影が鼻で笑った。

「そんな安易な考えはトレジャーハンターとして浅はかではないですか」

「これが本質だよ。トレジャーハンターはつねに追い求めるものはでかい」

「だいたいこの場所もわからなかった者が出雲の秘宝を手にできるわけがない」

「カップの地図とおまえが知りえた隠し場所の資料というのはなにがちがった」

「これは持ち主の亡くなった泉州公和さんが解読した資料の中に記されていた。“あなたがもっているカップの地図と、現代の地図ではじゃっかんのずれが生じている”」

「はっ」波多薪はおもいがけない事実に顔をゆがませた。

 前村に説明したが、どうやらそれについては告げていないようだ。御影は前村をちらっとみた。顔を背けたが御影の眼は温かい眼差しをむけていた。

「正確な地図を解析したものを羊皮紙に手書きで記し孫の小夢に手渡していた。そこにはカップの地図には山の形の麓にバツの記しがあった。泉州さんが解析したのは山の麓よりさらに奥に洞窟がることがわかった。それがここだ。そして、さらにそこには出雲の秘宝の在処につながらう最大のキーワードが書かれていた」

「キーワードだと」波多薪は左眉を傾けた。カップにはそんなキーワードは刻まれていない。

 屈強な男たちは困惑してぼう然と佇んでいた。まったくついていけない話のようで、たがいに顔を見合わせ戸惑っている。まるで思春期の男子が初めて好きな女子と面と向かって話しているように。

 御影は最大のキーワードを告げた。

「キーワードは、“一町いっちょう”」

「一町? なんだそれは住所か?」

 御影も最初住所かと思った。この地域にそんな住所は現代でも昔でもない。しかもそれは解析された地図上の洞窟の真横に記されていた。

「どういうこと…」

 前村がせかすように一歩前にでて御影を直視する。

「一町とは、つまり“距離”のことだ」

 波多薪たちは一町と距離がむすびつかないようだ。聞いたこともない単位だったためどう解釈すべきか困っているようだ。

 謎解きはいつも解答がわかったとしても解くまでの経緯を理解しないと意味がない。

 数学でいえば問題があり答えがある。だが、計算式の経緯がなくては解けるものも解けない。

 この世は暗算で解けるほど簡単な世界ではない。

「いま俺たちがいるこの洞窟の入り口から一町の距離のところに秘宝は隠されているということになる」

 祖父はあえてこの距離については現代ではなく、昔の単位で記していた。

「一町は今でいうところの、おそよ110メートル。つまり洞窟から110メートルのところに秘宝は隠されている。110と書かなかったのは、書けなかったがただしいか。おそらく現代でおもいつく数字で、この番号は110番とかんちがいする。つまり警察に連絡しろという意味になってしまう」

 単位でちょうど昔の距離を表わすと一町だった。土地名にも見えるから本当に歴史や地理に詳しい者でないとわからない暗号となる。

 祖父はこれに決めたようだ。一町いっちょう。尺貫法というものだ。

 

-ミステリー
-, ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品

見習い探偵と呼ばないで! Season9-1

見習い探偵と呼ばないで! Season10-7

その果ての刃 5

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】2

見習い探偵と呼ばないで! Season20-10