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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】28

   

 犯人逮捕に至った御影はこれですべてが解決したとおもった。

 しかし波多薪の執念は折れていなかった。とりおさえているというのに、ものすごい力が日下田の抑圧から逃れようとしている。

 御影はふと危機感を察した。が、外に視線をむけるとそこには──
 

 連行されようとしている波多薪に御影はひと言告げた。出雲の秘宝の有無について、その存在が隠し場所にあるのかどうか。

 だが御影の答えはノーだった。

“出雲の秘宝はあの隠し場所にない”、これが御影の答えとなるが──

 

 捕らえたトレジャーハンターたちを一網打尽にできたが、まだ抗おうと身をねじり抵抗している。

「くそっ! 離せ…、たからを目前に捕まってたまるか!」

 波多薪の気合いはすさまじかった。日下田がとりおさえているが跳ね返そうとしている。

「つ、つよいな、このひとだけは…執念か」

 日下田の険しい表情に危機感をおぼえた。

 油断できない。それほど執念深く、そしてハンターとしての足掻きをみせている波多薪は、心底貪欲で冒険のために生きている男であるとおもわせた。

 御影はちらっとべつのほうに視線をむける表情が和らいだ。抵抗する波多薪に追い打ちをかけるように言葉を述べた。

「ふんっ──、波多薪さんこちらも先手を打つシナリオを準備していたんだよ。あんたが一人で出雲の秘宝を狙っているとはおもえなかった。かならず複数の人間があんたと行動を共にしていると、そのための先手だ。ほらっ、洞窟の外をみてみろ」

 波多薪は洞窟の入り口のところで日下田にとりおさえられ地べたに這いつくばっていた。

 暑い陽射しが山肌を焦がすほど降りそそいでいた。顔だけをあげると熱砂のような地面を歩く数人の足がゆらいでいるのを目にした。

 蜃気楼のようなゆらめきのなかを次第にどんな人物であるのか、波多薪は愕然と凝り固まった心がひび割れていく。

「なに…」

 血相をかえた波多薪は急に全身のちからが抜けたように、日下田の抑圧を受け入れた。

 そこに現われたのは輪都、そして警官が数十名だった。

 このあたりの警察署から捜査にかりだされたのである。

「御影さん、助けにきましたよ」

 御影は、フッと勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。

「おせえよ。ギリギリじゃねえかよ」

 毎日探偵社にメールで一日の報告をしていた御影は、波多薪の素性についてもっと詳しく情報をもとめた。

 あまりにも単独的であったからだ。頭脳面では田井が加わっていたようだが、それでも力仕事になったとき二人だけでは不可能だろう。そこで作業員が数名いると見込んでいた。

 となると現場で発見されたとき、その者を連れていき場を制するだろうと推理していた。

 ならば先手を打つひつようがある。手だれが相手になるとすれば御影一人では太刀打ちできない。

 どういう動きになるかは毎日報告することで御影は戦略を練っていた。

 そしてついに前村という手駒を得た。きっと前村にしてみたら波多薪に告げ口するだろうとにらんでいた。

 秘宝に意識が集中しているところを背後から襲撃され強奪される畏れがあると懸念した。

 そのくらいのことは誰でも容易におもいつく。そこで御影は輪都に救済をもとめた。

 秘宝は山の中にあることは地図の配置でわかっていた。

 輪都は由真と一緒になって知り合いが遭難してしまった、助けてください。と警察に捜索願いをだしていた。

 さらに、氷室探偵事務所の名探偵氷室が電話でも口添えして警察が動くように指示していた。

 御影はそこまでやってくれるとはおもってもみなかったが、おそらく輪都の配慮によるものだろう。

「心配しすぎだ」

 出雲県警の刑事が目を細めていた。

「こいつらが盗難をする強盗団の一味なのですか」

「そうです。知り合いが誘拐されたので捕まえてください」輪都は即答した。

 御影は輪都の作り話に誘拐されたことになっている。

「あながちまちがいではないですよね」輪都は御影に耳打ちした。

「まぁな、たしかに…」

 証拠はそろっている。あとは逮捕のみと輪都が警官を顎でつかっていた。

「なにをバカなことを!」波多薪は声を荒げた。よく響く声だった。

「素性はバレているぞ」

 刑事の地を這うような声で波多薪は観念したのか震えはじめていた。

 屈強な男たちの素性もすでに調べはあがっていた。

 波多薪がこそこそと携帯電話で誰かに話をしていた姿を見たのは本当だったが、その会話は聞き取りにくかった。その様子からどうも後ろ暗さがにじみでていた。

 探偵の直感でそのときの光景が記憶として鮮明に残っていた。

 波多薪は犯罪を犯すことはない。ただ指示しているだけだ。犯罪教唆とでもいうのか、利得になることならどんな手段も厭わない。それが男のロマンである。

 そんなプロデューサーの顔としてインターネットにどこかの雑誌か番組かのインタビューに答えた記事が掲載されていた。

 要するに波多薪は常識や非常識、そんな堅苦しい世間とは掛け離れた世界に身を置いている。財宝や秘宝という言葉に吸い付くハイエナのようなものだ。

 トレジャーハンターというのは心が湧くような出来事に胸躍るもの、法律がなんだ、世間がなんだ、俺は俺の生き方がある。こうやって男は目的を貫き通し人道を歩むのが真のトレジャーハンターだと豪語している。

「テレビの中だけにしてくださいよ。プロデューサー」刑事は頭を抱えながら肩を落としていた。

 

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