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現代ドラマ

決して許さない 第三回 支えられる日々

   

慣れぬ一人暮らしも、気を張って頑張ってきた明彦だが、親子連れを見ると急に寂しくなってしまう。

そんな挫けそうな時、住職は「辛い時は、胸の前で手と手を合せて両親の顔を思い出して見ろ。お前は独りではないんだ。お前の中には常に両親の血と心が生きている。」と励ましてくれた。

しかし、寺にはいい人ばかりではない。嫌な高尾がいる。

彼は定期的に「檀家回り」と言って、山を下りるが、本当は他人には言えない秘密があった。金や女つられた不正蓄財の片棒担ぎだ。

こんな暮らしが続いていたが、ある日、母親からの手紙が届いた。

明彦は素直に喜んだが、読んでみると、腑に落ちない点が幾つかある。本当に母親からの手紙なのか・・・

 

 
ホームシック
 

平成11年6月、朝晩はそれほどでもないが、日中の気温はグッと上がってくる。作務衣を夏物に着替えた明彦は日課の庭の掃き掃除をしていた。

そこに、「ふぅ・・1等賞!お父さん、お母さん、早く!」と、小学校5年生か6年生の女の子が駆けこんできた。

「待ってよ、陽子・・全く元気がいいんだから・・はあ、はあ、はあ・・」

後を追いかけてきた両親は息が荒い。二人とも30歳代か、明彦の両親よりも若い。

源正寺は町から離れた山間にあるが、時にはこの親子のように、ハイキング方々、訪れる観光客もいる。

「源正寺か、古い寺だな。」
「そうね。どんな謂れがあるの?」

観光地図を手に、寄り添って話をする3人。昨年までは、明彦も両親と一緒に夏休み、冬休みは勿論、ちょっとした休みにはドライブ旅行などに出掛けたものだが・・そんなことを思い出していると、突然、女の子が駆け寄ってきた。

「あの、おみくじはどこですか?」
「あそこの硝子戸のところ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」

お礼を言って両親の元に駆け戻るその子を見ていたら、急に寂しくなった。

<お母さん、手紙もくれないで、何をしているんだよ・・>

2月から色々なことがあって、その分だけ気を張って生きてきたが、思い出してしまうと、会いたくて、会いたくて堪らなくなる。

木々の葉は美しく、庭には沢山の花が咲いているが、今の明彦にはそんなものは目に入らない。

 

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決して許さない 第1話第2話第3話

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