幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理【サンライズ出雲・Life Game】29

   

 磐木家にもどった御影は由真が外出していたため顔を合わすことがなかった。

 体調が気になっていたが小夢のすがすがしいほどの笑顔をみて、それ以上の詮索はしなかった。

 輪都が出雲観光をしたいとわがままをいいだした。御影は依頼を終えたら夏休みにはいる予定だった。

 だが、ふと輪都と一緒にいたはずの由真が警察に駆けこむことになると体調が悪くなり姿を消したということが気になった。

 しかも自宅にもどらずそのまま──

 御影は由真の行動について思いあたる節がある。それは──

 

 パトカーに乗せてもらい山を降りる御影と輪都は磐木家におとずれた。

「心配かけてすみません。荷物もあずけたままで」

 御影の身を案じて磐木家では海の底の中にいるような重々しい比重を背負っていた。

「由真ちゃんの体調はどうですか、なんだか体調がわるくなったとかで」

「お姉ちゃんならだいじょうぶだよ。朝からでかけていった」

 御影を見た家族はほっとしたような顔で出迎えてくれた。

「そうか──」

 由真と話そうとおもったが御影は顔をあわすことなく荷物を取り、出て行くことになった。

「カップなんだけど取りもどすことはできた。事件の証拠物だから数日もすれば持ち主である由真ちゃんのところにもどるとおもう」

「ほんと!」小夢は霧が晴れたような顔で明るくこたえた。

「だから伝言しておいて、たいせつな宝物は二度と手放さないようにねって」

「わかった。だんだん…、いえ、ありがとう探偵さん」

 ニコッと小夢は微笑みかえした。

 輪都は小夢がいいかけた“だんだん”という言葉がなんだろうとつづきを考えたが想像から浮きでてくる言葉はなかった。

 それと由真が朝からでかけて、そのあと体調が悪くなりもどってきたのではないかと疑問を抱いたが、御影は指摘しなかった。だから輪都もこれいじょう面倒なことになるのは避けようと疑問を流した。

 両親が無言で頭だけをさげてお礼をすると、御影も気まずそうに頭をさげた。

「これで依頼は完了したというわけですね」

 玄関をでた輪都が晴れ晴れとした顔でいった。この日も晴天だった。きっとどこかすぐれない気分のままでいたのだろう。輪都のきもちはわからないわけではないが、御影の心はいまだに曇天の下にいた。

「完了か…」

 昼過ぎだったことに輪都が少し観光をしたいといいだした。御影は渋々つきあうことになった。

 昨日から一昼夜、暗がりの洞窟の中で過ごしていた。睡魔も襲ってきて疲労困憊だった。しかしとてもじゃないが眠れそうになかった。

 頭のなかでは目まぐるしいほどの熱砂がふきこんでいた。

「由真さんと話をしたいんですか」

「まぁな。ゲームの結果に落ち込こでいたようじゃないか。不本意であっただろうから、あやまりたいとおもっていた。しかたがない」

「寝食を世話になったんですもんね。そりゃ情がはいりますね」

「ちがうよ。そうだ、店のほうにいるのかも、ちょっと寄っていこう」

「骨董店の経営者でしたっけ、いいですよ」

「えらそうにいうな」

 二人はその足で泉州骨董店にむかった。

 しかし、ちかくまできてすぐにわかった。店内は暗く誰もいない。

「ざんねん、でしたね…」

 輪都はちらっと御影に視線を流すが、どこか遠のいていくような錯覚に陥るように見やる。

「どこにいったんですかね」

 御影はくすっと微笑むと骨董店に背をむけて、そそくさと歩きはじめた。

「待ってくださいよ」

 輪都は小走りでついてきた。

「俺はこのまま夏休みなんだよ。なんでおまえと一緒にいなきゃいけないんだ」

「そんなこといいますか。はるばる助けにきたというのに、一泊して御影さんのおもりをして東京にトンボ帰りなんてできませんよ。満喫します。帰りの電車もサンライズ乗りたいです。夜までいましょう」

「なにいってやがる。すべて自腹になるぞ」

「いいですよ。これでもしっかりと貯めてますから」

「へぇ、ていうより使い道がないだけなんだろ」

「よけいこといわないでください。ひとまず出雲神社へ」

 御影はあきれた。きっと縁結びのご利益にあやかろうというのがみえみえだった。

 磐木家の家族のことがふと頭をよぎった。

 由真が朝からでかけたと小夢がいったときの両親のこわばった顔ときたらあからさますぎる。

 体調が悪くなったことなどしらないといわんばかりに。きっと一人でどこかへとでかけたのだろう。

 御影には皆目見当がつかなかったが、横目で輪都を見据えていた。

 輪都は由真と一緒に行動をしていた。それが警察に駆けこむことになると、突然に由真は体調が悪くなったといって輪都から離れてしまった。

「はっ、まさか…」御影はぼそっとくちから声をもらした。

 神社とは間逆の方向に御影は振り返った。その方角は出雲の秘宝が隠されていたとされる洞窟のほうだった。

「由真ちゃん、きみは気づいていたんだね。継承すべきは妹の小夢であると、だから自力でたどりついた。出雲の秘宝の在処に、きみはそこにいるのか──」

 輪都は前方をそそくさと歩いていき御影をおいていったがきていないときづくと大声で御影をよんだ。

「恥ずかしいから大声でよぶな。探偵はつねに陰日向だ」

 お祈りをして縁結びの御守りを買った輪都はすこぶる満足そうな笑みを浮かべていた。

「なんかひくな、どうしたいったい…」

 輪都のそんな無邪気な表情をのぞきこんでいた。

「いいじゃないですか、抛っておいてください」

 

-ミステリー
-, ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品

見習い探偵と呼ばないで! Season9-4

見習い探偵と呼ばないで! Season15-5

見習い探偵と呼ばないで! Season11-4

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】1

見習い探偵と呼ばないで! Season20-20