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現代ファンタジー

キッズ・レンタル1(全4話)

   

 名響はうつむきながら顔を上げると微笑みうなずいた。スマートフォンの遠赤外線機能で連絡先と名前を交換した。ここからこれまでにない純粋な恋愛ができるような予感がした。

 改はスマートフォンのアドレス帳に彼女の名前が記録されてはじめてその名前を知った。

 彼女は恥ずかしそうに一礼し職場へと向かった。交際のはじまりの兆しかもしれない。改の胸は踊っていた。というよりベタなドラマのワンシーンだろ、いまどきこんなリアルな現代で起こるはずがない。他人が注意をして歩く者同士。それは閉塞された壁のようなものが身体のまわりを覆っているからだ。それでもこの出会いは起きてしまった。

 神様もたまにはトレンディードラマが見たいのかもしれない。

「九歳も年下だったのか」

「そうね、でもいいじゃない」

 名響は気にもとめなかった。年齢の差なんて関係がない。その器量の大きさが彼女のポテンシャルだ。

 改は結婚にたいしていつになく真剣に苦悩していた。おのれの気持ちでぶつかっていけばいい。その反動で起きた不安なんて言葉や態度で大なり小なり納得できよう。そうやっていかなければさきには進めない。

 いままで一緒にいた時間を共有した日々を思い出したらおのずと答えは出ているはずだ。不安なんてものは自ら作り出している強迫概念であると。ほんとうは心底相手を思いやっているはず。だから結婚を望んでいるその気持ちはなんとなく流れで、なんてあいまいな言い方でも正直に他者に話すことに抵抗があるのは単なる照れや羞恥心なだけである。

 望むものそのすべてが彼女には具わっていた。それを手放したくないから改は望んだ。

「名響、結婚しよう」
 
 

≪つづく≫

 

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