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現代ファンタジー

キッズ・レンタル2(全4話)

   

 名響は画家になる夢があった。しかし、画の技術が伴わず挫折していた。家業は美術館を運営をしていた。両親からも継いでもらうことを切に願われていた。

 画を描く才能はなかったかもしれない。しかし画を見る眼力はすぐれていた。

 両親に画家になる道を阻まれてしまい、名響は美術館で働くも、将来に落胆していた。そんなとき、一人の男性と出逢った。

 それはまるで運命が交差させるように二人は出逢う。

 そして、改は幸福な家庭を築くため、名響と互いの問題について、インターネットの世界で探し物をする。

 するとインターネットで調べているうちに、あるページにて戦慄が走った──

 

 改の心と血の問題が孤独の部屋から共有への決断にいたった。

 二十九歳の名響が婚期というものを意識しはじめて、どことなく焦りからかアピールしてくるその眼差しを拒むことはなかった。

「名響もおなじ気持ちでよかった。おれも同感だよ。むしろ、もっとはやく男として言うべきだった。ありがとう」

 改は名響に感謝を伝えた。

「うん、よかった。焦っていたわけじゃないの、わたしたちの関係から考えたら、そろそろその時期なんじゃないかっておもって」

 名響はめずらしく熱弁するのには確実たる改の同意が必要だった。無理強いしていることではない。納得しての結婚だということを互いにしっかりと受けとめたい。それが名響の心情だった。

 改の本音は心のなかにしまわれていた。この五年間、名響と一緒の空間に居ながらもなぜか不安を抱いていた。

 将来性という現実をどう生きていけばいいか。その肩に背負うのは家族として主として、責任重大な立場が苦悩していた。

 夫、父親として成すべき人間だろうかと、将来性を懸念しながらただその一点のみを危惧していた。

 彼女の姿を見るたびに未来を想像してしまう。想像どおり、理想どおりに築くことができればいらぬ心配だ。

 とりあえず名響はどう考えているか、率直にたずねるべきだ。

「なぁ、名響…」

 めずらしくあらたまり重い口調の改の声に過剰な反応をみせた。

「な、なに…どうしたの、そんな深刻そうな顔しちゃって」

 ソファに並んで座る名響が改の顔を凝視しながらみつめる。

「うん、おまえって将来のこと、どう考えているかなと、つまり…」

 そこで言葉が詰まった。

「それって結婚のこと?」

「あぁ、そういうことだ」

 一瞬の沈黙が流れた。名響がしばし思考を働かせているようだ。その間が改は恐かった。

「べつに、普通じゃないの」

 びっくりした、と思わず声が出ていた。名響は冷静だった。

「心配なことはないのか」

「それって改さんと、家族になることが心配かってことかな」

「まぁ、とうぜんだろ」

「ぜんぜん」

 ここまできっぱりと返答した九歳も年下の名響がたくましくみえる。改の弱い心の顔が恥ずかしくて手を胸にあて覆っていた。

 華奢で、か細い体形の150センチしかない低身長はまるで小動物。リスやウサギにしか見えていなかった。鹿のようなツンと首を伸ばし遠目で凛々しく佇んでいる。

 一瞬で瞳から心へ伝達された感情が奪われた。それだけ可愛らしさのある女性だなと、あの突発的に出会った瞬間の一目惚れは紛れもない運命である。そのギャップがあるような結婚への躊躇いも心配もないほど名響の心は強かった。

 改のいらぬ心配だったことを名響の存在がかき消した。すべてを信頼していい。夫婦とは、家族とは、そういうものなのだと改は知った。

 それだけの器用のある女性を妻にできるのは幸いだと改は心底、名響と出会ったことに感謝している。いったい何を気にしていたのか、改は自分の性格を悩んでいたせいだ。

「やはりキミの性格がいい」

「そうかな」

 照れ笑いしている名響は実に可愛い。その可愛さは歳を重ねても変わらないような気がする。

 改はいい加減で自己中心的なタイプだ。名響はそんな改の性格を立て支えて、なにかと我慢し耐えている。笑顔ひとつで改の要望や言葉の数々にわかったとひとつうなずいてくれる。すべてを受けとめてくれる女神のような存在だ。

 改はよころびに飛び跳ねてしまいたいくらいの衝動にいつも心が躍るのだ。

「うそ」名響は唐突に笑顔を取り真顔で言った。

「なにが」改は躊躇った。どこがうそで、なにがうそなのかを。

「ほんとうは将来のこと、わたしも婚期っていうのを…」

 名響の不安や不満などをこれほど隠し通すのは改を愛しているからだろう。将来性はお互いに認めているからこそ、時期のみの判断だけを探っていた。

 名響は根気強く相手を立てるだけの器がある女性だということだ。家族になったら旦那を引き立てるのはとうぜんのように。

 そのことを名響は育った環境からすでに身につけている。言い知れぬ性格のよさと共に。

 名響の不安や不満もないその笑顔はある意味、改を束縛していたことに気づいたのはこのときからだろう。それは改にとっても支えてもらっているという実感があってのこと。

 

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キッズ・レンタル 第1話第2話第3話第4話

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