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現代ファンタジー

キッズ・レンタル3(全4話)

   

 改はついにロボットの受け取りの日、自家用車で出掛けた。掲示板の管理は“フューチャーロボットテクニカルセンター”とあったが、そこは都内の外れにある意外な建物だった。

 キッズ・レンタルの商品説明を二人の博士によって受講することになる。かなり濃密な受講内容だった。

 辟易している改に博士は助言した。子どもと過ごすことを試しにおこなうのは、本当の幸福な家族を築くために必要であることを思い出すよう告げた。

 改ははっきりと思い出す。名響との暮らしに一抹の悩みすら払拭したいこと。そのためのプランであると。

 そして開幕する。家族ごっこが──

 

 受け取り当日。

 朝の8時になると改は仕事の取材と偽り、自家用車の日産LEAF・Gで出掛けた。

「夕方には帰るから、晩ご飯よろしくね」

 名響は笑顔で見送ってくれた。

「いってらっしゃーい」

 その笑顔が驚きに変わるのを改は楽しみになっていた。

 車のなかで、「きみにはサプライズになる日だな」と胸が弾ませエンジンをかけた。

 都内の外れにひっそりと隠れるようにしてその建物はあった。東京都あきる野市あたりまできた。いつのまにか山間がひろがる自然界に入り込んでしまったような錯覚をおぼえた。

 自宅をでたときは都会の創造された世界においていたが、ほんの小一時間ほどで同じ東京都内とはおもえない光景に面食らっていた。

 乙津という場所だ。近くに秋川渓谷瀬音の湯がある。来たことはないが、家族できてみようかと心に浸透している景色が広がっている。

 ロボット開発に精を出している輩だ。いかがわしい研究にはつきものの立地、隠れ蓑にはおあつらえむきなのだろう。

 10時前には着きそうだった。

「この場所だよな」

 メールで送られてきた情報をプリンターで印刷し、記載されている住所をたしかめた。

「あってる」

 眼前には広大な敷地に建造物が目にはいった。いかにも研究所らしき建物だった。

“フューチャーロボットテクニカルセンター”と、ネットでは表示されていた。

「それが会社名ではないのか、ネットの広告でそう掲載されていたけど…」

 たどり着いたこの場所のその建物の看板を見て相違しているのが一目瞭然だった。

「あきる野国立研究資料館」門扉の横に看板があり読みあげた。「ここでいいのかなぁ、たしかにロボットだからこういう施設がバックにないと説得力はないか」

 車を研究所の奥へと進ませた。左方向にさらに進むとゲートがある。誰もいないが、ゲートが閉ざされていた。インターホンがあり押してみると、男の声がかえってきた。

「本日はどのようなご用件でしょうか」

 おそらくこういう門構えでのやりとりの相手は警備員だろう。

 研究所に来られたさい担当の名前を言うようにと案内されていた。

 だったらこの研究所も入るのかどうか記しておいてほしい。まちがいじゃないだろうな? と訝っていた。

「担当のミノさんと約束してます。こちらでよかったですか?」

 男の声は名前をたずねてきた。改はフルネームで名乗った。

 警備員のところまでしっかりとつたわっていたようだ。ゲートは開き、すんなりとなかへと通された。

 奥へ入っていくと白衣をまとった年輩の男性が二人立っているのが見えた。

 自動車を停止し改は降りると、男性たちとの距離が10メートルは離れていたが声がとどいていた。

「ようこそ、未来を担う研究所へ」

 頭が薄い男性がにこにこしながら口もとを朗らかにやわらかく話はじめた。この禿げた男性が担当の職員、美濃みの とおる博士、見るからに五十歳を過ぎているようにみえる外見だ。

「どうも」

 改は未知の世界に足を踏み入れたことで場違いだと悟っていた。

「きょうはレンタルしていただきありがとうございます」

 ひげ面の男性が口を開いた。同じ職員で、古家ふるや 秀一ひでかずと名乗った。こちらも五十歳過ぎくらいにみえる。

 だが二人とも声の質や性格的なテンションが同じだ。気味がわるいくらい明るい。なんともついていくのは二十代くらいのパワーがいる。

「それでは早速ではありますが、ご注文されたものをその目で見ていただきましょう」

 美濃が両手を広げてオーバーアクションをしてみせた。

「こっち、こっち」と古家は両方の人さし指を立てて何度も声とその指の示すアクションを繰り返していた。

 改の心は硬直していた。こんなわけのわからないおじさん二人と同行しているのか不思議でならなかった。自分は作家で相当な変わり者だと思っていたが、この二人のまえでは一般人以外の何ものでもない。

 そのまま研究所内へと通されると、なかなか広い会議室で受講をすることになる。三十人は入ることができるだろう。重要な事案であると改を本気にさせる。なんのために来たのか再確認し、びしっと胸に気合いが入る。

 最初のメールには注意点の記載があった。

1、ロボットを購入したことは周囲に公言してはならない。

2、家族内でも目的として必要な人物以外に教えてはならない。つまり、本人もしくは配偶者だけが知ることを許可する。この者以外は決して公言してはならない。

3、レンタル期間終了後、いっさいのデータを所持してはならない。すべて研究所に提出していただく。

4、ロボットを破壊したさい、乙または丙のどちらにも責任は負わないとする。機密事項のため一般公開はしない。もしロボットが暴走して契約者以外の第三者を傷つけてしまった場合、この限りではない。

5、当事者、つまり本人、もしくは配偶者をロボットが傷つけた場合、乙丙のどちらにもその責任は負わないとする。

 

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