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現代ファンタジー

キッズ・レンタル3(全4話)

   

 これはあくまでロボットに関する事項であり、ほかにさ様々な規約が明記されている。全項目の規約事項は100はある。

 上記の条件に含まれない状況に陥ったとき、それは自己責任となる。なにが起きても研究所は一切の責任を負わない。購入した者に責がある。と説明をこと細かく拝聴した。

 思っていた以上に奥が深いため、改の頭脳は電流が混線して火花が散りショートしている。

「休憩にしましょう」

 禿面は気づかってくれたようだ。二時間ずっと受講していた。さすがに聴いているだけでは疲れてしまう。

 研究所内の日当たりのいい簡易的なソファに改は座り、隣にある自動販売機で缶コーヒーを買って飲んだ。

「マジですさまじい。そりゃそうだな、ロボットが人間のように動くんだもんな。ペットを飼うわけじゃない。子どもとしての役割を疑似体験するんだからこれくらいの受講はとうぜんだったわけだ。迂闊だったな。無知では子どもは育てられないことがわかった。ロボットを操るのもおなじってことか。コントローラーがあるわけじゃないもんな」

「たいへんですよ、ロボットは──」

 美濃博士が唐突に声をかけてきた。禿げ頭が日当たりのいいこの場所では照らされて熱そうだなと改は思った。

「キャンセルはやめてくださいよ。こっちとしてもめんどうですから」

 もう後戻りはできない。キャンセル料は取られる。すでにロボットは改と名響のDNAや特徴や性格などをインプットされた状態で出荷された。これを完全クーリングオフするのには手間がかかる。レンタル料の3割の負担となる。

 美濃博士はつづける。「ほんとうに必要だったときのことを思い出してください。説明を聞けば聞くほど難解と思うようになり、実際の子育てと同等と思えば気持ちの負荷は軽減されます」

 そう言われて改は考えた。名響と家族を持つことをまずは第一に考えることだ。どんなことが起きても、それは名響との暮らしを現実にするために。

「自分が父親になれるか、適しているかそれをしりたいんだ。これはおれにとっても試練でお試し家族だ」

「目的がはっきりしているならそれでいいですよ」

「それでも購入まえにもっとメールでもいいから質問しておけばよかった」

 改は子どもをもつためにいろいろしらべていたが足りていなかったようだ。勉強していたとおもったが無知のままだった。

「それなりに何通もメールを繰り返していたじゃないですか。もっともロボットにおいての技術や性能とかはたずねられなかったようですが、さきほどまで説明している内容はすでにメールの文面に資料の内容を送って目を通されているはずです」

 そのとおりだった。メールでみていたが頭にはいってこないのがメールというものだ。

「無知が生じた後悔なんてこれまでいくらでもあった。音楽をめざしていたときも後悔で終わっている。でもそんなおれでも作家に転移し名響を選んだことは正しい選択だ。きっと無知でも二人ならきっと──」

 改がそういうと美濃博士は微笑みをしまうように真剣に答えた。

「ひとが生きるうえでいちばん必要なことをわすれてはいけない。後悔はだれにも予測はできない。それを挑む勇気があってよかった。もしくはやって失敗した。のどっちかなのです。それはあなたが挑む勇気、判断、気持ちだと思います。いまはどうですか?」

 改は、いまいちど考えをめぐらす。名響が喜ぶ光景を思い浮かべた。築かれた家族を改が中心となって現実を夢に抱いている。そのデモンストレーションとして今日ここにいる。

 それをわすれてしまうところだった。進むしかない。キャンセル料を無駄に支払うためにではない。ここで理想の家族が成り立つかどうかの試作。それをこの眼で、この体で、体験しなければならない。それが改の哲学の垣根である。

 明るい未来があることを信じている。

「体験に勝るものはなし」

 博士は改の判断の言葉に眉毛がうれしさのあまりか、かもめのようにつりあがった。

「それでは、つづけましょうか」

「はい」

 広めの会議室へもどる足取りは軽快さが戻っていた。

 

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