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現代ファンタジー

キッズ・レンタル3(全4話)

   

 途中、軽食を摂るくらいの時間がかかった。改は思いのほかくたくたになっていた。頭にいっきに詰め込みすぎたからだ。

 受講の説明は終わったのがおやつ時だったろうか。とくに時間は意識していなかったが肩の荷がおりた。

 日産LEAF・Gの後部座席に注文の品をしまいおえた。

「博士──」

 改は二人の白衣を着こなしている博士に笑顔をむけた。説明が終わったことと商品をこの眼で確認し、しっかりと動作や性質を確認したことに満足した結果だった。

「ありがとうございました。来てよかったです」

 二人の博士は皺くちゃな笑顔で微笑み返した。

「良いご家庭を築きなされ」

 禿げ上がった美濃博士が言った。

「レンタル期間中のフォローはいたしますのでいつでもメールをくだされ」

 ひげ面の古家博士が言った。二人とも変にテンションが高いがいい人たちだった。

「感謝します。ほんとうになにかあったときは連絡します」

 改はエンジンをかけた。

「ふー、帰宅しよう」

 帰りの運転に集中力が欠けてしまいそうで不安だったが、名響がどんな顔をするのか楽しみになっていた。

 バックミラーでちらっと背景に視線を向けると、博士たちは腕を伸ばすほどに手を振っていた。

「笑えるな、あの博士たちは…、陳腐な異才だ」

 フロントガラスから広がる空は午後の三時を過ぎでも青かった。どことなく澄み切ったような青さではなく、青でも少し濃いというか、くすみがかった青のような印象だった。

 これほどじっくりと青い空を見ながらを走行するのはめずらしかった。

 雲ひとつない真っ青な空だが、青すぎて胸が沈んでしまうほどの青だった。まるで深海にまっさかさまに落ちているような錯覚さえ、いまの改は疲労していた。この空の広がりはまるで改を呑み込もうとしているようだった。

 異質な品を自動車に乗せている。あからさまにできないその後部座席にいる人を象った物。まだ命は芽吹いていないが、自宅に近づくときにスイッチを入れることにする。

 そして始まる。「家族ごっこの開幕──」

 

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キッズ・レンタル 第1話第2話第3話第4話

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