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現代ファンタジー

キッズ・レンタル3(全4話)

   

 それから二ヶ月が経っても家族として空間を暮らしていたら、それなりに心の扉は開くものだ。馴れ馴れしさもでる。遠慮もせずに今夜はカレーが食べたい、ハンバーグがいい、オムライスがいい、とわがままをいうものだ。子どもとはそういうものだ。

 改の眼前にいるのは蒼空ではない。預かりの子どもではない。ロボットでもない。改と名響の特徴を持った将来誕生するであろう試作の子どもである。

「ほんとうのおれたちの子どもって二人のDNAから誕生するのは、こんなにも素っ気無く、無関心で、家族の輪に背をむけて、ひとりでゲームをやって時間を過ごすのだろうか」

 改はそこまで頭のなかで考えをめぐらせると思い当たるふしがある。アルバムを開くように幼少のころの自分がよみがえる。子どものころ眼前の蒼空とまったく同じ様子だったことが思い出される。

 一人っ子というのが、そうさせるのだろう。

「おれにも遊び相手がいなかった。ゲームやプラモデル、そういえばいろいろ創作したなぁ。おかげで芸術面の才能は伸びたけど…、仕事もそういうところからの延長で道を開いたようなものだ」

「そうね」

 名響は淹れたての珈琲を飲んだ。改はこの珈琲が大好きだった。

「ソラにも同じことをしているのかもしれない。そうなると家族でも、他者との共有する心が育たない。おれが会社で勤務できなかったのは、そういう他人とのわずらわしい人間関係が問題だったからだ。だから二十六歳のときに会社を辞めた。そこから必死に独学で、自力でここまで芸術家としてやってきている。音楽にまつわる作家として、小説、ライトノベル、出版社の記事など、自分の頭のなかにある発想力を駆使して仕事ができている。もっとも名響がそばで支えてくれていたから、生きてこれたと感謝している」

 名響に感謝を述べた。あまり面と向かって伝えることはなかった。

「そうかな。支えというより助力をしたの。わたしもずっと一緒にいたいと思って。それに才能ある人だと信じているから。あの子とあなたは似てるのかな。わたしにはそうは思わない。あの子は預かってるよその子ども。わたしたちの子どもはどんなふうに成長するか、たのしみだけど…」

 名響は事実を真実だと信じていた。改の嘘を真に受けている。

「おやつ食べたい」

 蒼空がゲームをしながら満面の笑みで彼女にせがむ。

「はいはい、きょうはプリンよ」

 蒼空がむじゃきに喜ぶ。

 改はただこういう光景をみたかっただけだ。母親と息子(娘)。その関係を自ら築いた空間のなかでおもむろに、そしてむじゃきに、自分なりの家族を築いていきたいと、それだけの理由の試作をしたかっただけだ。

 名響がキッチンでプリンを蒼空のために用意している。改はその姿こそが求めているもの、そして挑まなければならないものだと確信した。

「克服しないと、ほんとうに父親になることの覚悟を決めなければ」

 

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