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現代ファンタジー

キッズ・レンタル4(全4話)

   

 名響が目を覚ましたときに蒼空の無表情な顔と、身動きしないことの異常な光景にパニックになった。改がなだめながらすべてを話しきかせると、気絶した。

「ソラはロボットだったのね」病室で名響に説明した改。悪びれた表情は暗かった。

「すまなかった」

「いいのよ、あなたの思いはわかったから…、どおりで、おかしな点がいくつもあったわけだ。あなたに似ているようで似てないし、わたしたちの特徴をインプットしていた子どもだったのね。気づかなかった。でも母親になったような気はしていた。目の前で錯覚のような現象があったの、わたしの子どもってほんとうにソラみたいなんじゃないかって。将来、子どもできたらケンカしちゃうのかな。なんか不安…」

 名響はそこで溢れる涙をこらえきれなかった。改がそっとハンカチでぬぐってあげる。名響はそこで何度かうなずいてみせた。無言の優しさに感謝をあらわしたのだとわかった。

 彼女は自分の腹部をさすっていた。優しいその瞳には愛しそうに想像した未来を見ていた。

 改は覚悟を決めていた。「これからもっと成長するんだな。おれももっと成長しないと、こんな結末にはなりたくない。もしかしたら、ほんとうの子どもとの家族ではもっと悲惨な結末になるかもしれない。そうならないために、おれが自信をもたないといけないな」

 彼女は微笑みながらうなずいた。

「そうだ。子どもはふたり作ろうな。おれたちの生活環境やら、育て方を考えてみると、一人は避けた方がいいかも、おれも一人っ子だったし。きみもそうだ…」

 彼女は、つまる声で、うん、とこたえた。

「それには、まず一人目をしっかりと育まないとな」

 名響は「はぁー」と息をはきながら、そうね、と返した。やっと微笑みがもどった名響の顔は、すでに母の顔になっていた。

「おれより、覚悟は決まってるようだな」

「そうよ」

 命をその身に実感したものは強く、女の強さの糧とは何でも理由になる。

 男はどんなに理由があっても、それを維持し成長させるのには、折れやすくもろいのだ。だから互いに寄り添い、損なっている面を補い、主張しすぎる部分は調和をとるように緩和と抑制のバランスをとる。

「むずかしいな、家族って」改は頭を掻いた。

「でも、これまでの多くの人たちがそうしてきたのよ」

「うん、できるかどうかだな…」

「また弱気になってる。さっき自信もたないとって言ってたのに…だいじょうぶ、信じてるから。それにわたしたちの子どもよ、今回のことで免疫がついたかもしれない。応用が利くのが人だから…」

「ああ、そうだな。おれもそう思う」

 蒼空を否定した言い方だった。ロボットの成長は限界がある。プログラムを組まなければいけないからだ。いくら成長できるチップを取り込んでも意味はない。ロボットが人を越えられない。越えることは不可能だからだ。

「子どもの名前どうする?」彼女はうれしそうに聞いた。

「わかってるじゃん」男の子だということであれば、名前をつけるのは決まっていた。「女の子だったら考えるのがたのしみで、時間をつぶせる」改は言った。

「そうね。わたしもおなじかも」

 改と名響は窓の外を見た。

「すっきりした“青い空”だ」
 
 

(了)

 

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