幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

現代ファンタジー

キッズ・レンタル4(全4話)

   

 蒼空の小さな身体は無警戒に外出をして世界にその身をさらす。周囲は甲高い声がにぎわいをとばしている。子どもたちがキャッキャキャッキャと雛鳥のような産声をあげていた。

 凛とたたずむ蒼空は公園の生い茂る木陰に身を隠しながらガラスのような眼でみつめていた。

 多くの幼児が砂場遊びやブランコにスベリ台で遊んでいた。蒼空も子どもたちが遊んでいるところに歩みをゆっくりと忍ばせながら近寄っていく。

 蒼空は砂場で遊ぶ子どもたちをじっとみつめていた。

「いっしょにあそぶ?」

 その視線に気づいた一人の男の子がカラフルなプラスチック製のスコップをにぎり誘ってくれた。

 砂場には砂山がせっせと積み上げられ、天辺にはファミリーレストランのお子様ランチに添えられた楊枝の日の丸の旗が立てられていた。

 蒼空もファミリーレストランでお子様ランチを食べたときについていたことを思い出した。

「きみたちと? じょうだんはよして」

 蒼空は男の子と女の子数人が砂場で遊んでいるところに割って入った。すると旗が掲げられた立派な砂山の天辺を、踏み潰した。

 はっとした顔の男児女児たちが夢を崩落されたかのように泣きじゃくった。蒼空は無表情のまま見おろしていた。そして首をかしげると、何が悲しいのかわからなかった。

 なにが楽しくて砂山なんてものを築いていたのか、理解ができないといわんばかりな反応だった。

 この公園にいる同じ幼児たちの中で異質な思考を放っている蒼空ではこの場の遊びは稚拙すぎるのかもしれない。

「子どもの遊びはつまんない、ゲーム機のほうがおもしろいことを知らないのかな、この子どもたちは」

 蒼空はいじわるく嘲笑した。これから生きていく子どもに教えてやる。楽しめる遊戯は砂遊びや遊具ではない。大人たちが子ども向けに作りあげたゲームである。テレビゲームもまた人生が含まれたゲームである。

 勝ち誇った態度でその場を退いた。上に立つ者が勝者である。頭をさげる者が弱者であると、蒼空は名響から教わった。

「あの女が僕をよく叱る。躾るような気迫がジャマだ。この子たちも心のどこかではそうおもっているはず、知恵がないから感覚や感情表現の稚拙さのせいで、大人たちと対等な意見を出し合えない。それがきっともどかしくて、そして阻まれた憤りは荒ぶる感情のせいで、泣くという選択を余儀なくさせるのだろう」

 公園内にいる子どもたちが泣き叫んでいるのを聞きつけて、母親たちが近寄り砂山が踏み潰された痕跡をみて、どうしたの、と上ずるような声を張りあげていた。

 母親が子を心配する姿を一瞥する蒼空だが、ビー玉のようなとても冷たい眼差しをおくっていた。

「あの男の子が踏んだの…」

 と児童たちの声がまばらに母親に訴えていた。周囲を見渡しても、それらしい子どもの姿はなかった。影すらもない。立ち去る背中もみえなかった。

「よしよし、もうだいじょうぶよ、また造ろうね」

 母親たちが我が子の乱された心情を緩和するようにやさしく頭を撫でてなだめていた。

 繁みに隠れる蒼空は、その一部始終を目撃しながらほくそ笑んでいた。ニヤリとあざ笑う蒼空の感情豊かな表情が形成されていく。

 だが、感情とは裏腹に子どもらしからぬダークな一面を露わにしている。

 どうみても、改と名響の情報から作られたロボットではない。

 

-現代ファンタジー
-, , ,

シリーズリンク

キッズ・レンタル 第1話第2話第3話第4話

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品