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現代ファンタジー

キッズ・レンタル4(全4話)

   

 改と名響のところに蒼空が来てから数ヶ月が過ぎた。改が仕事へ出掛けていった後、名響と蒼空も二人きりで出掛けた。名響は少し緊張している。蒼空がまともに会話のコミュニケーションを取ろうとしないからだ。

 それでも蒼空が外出するようになって、名響は子どもらしさに微笑んでいた。無邪気に走りまわるのが子どもであると思い込んでいる。改もよくそういう話をしていた。元気があって駆け回る。冬でも外で遊んでしまう風の子であると。

「最近よく外出するでしょ、だから今日はわたしと一緒に買い物に出掛けようと思って、いやだった?」

 手をつなぐわけでもなく、蒼空との距離をB5ノート一冊分あけていた。それだけの埋められない絆がまだ二人にはある。どうせなら、そのノートに絆を埋められる言葉を書きなぐりたいくらいだろう。

 徒歩10分ほどのスーパーマーケットに買い物に来たが、蒼空は表情をいっさい崩さず相変わらず子どもらしからぬ面相であった。

「なにか欲しいものとかないの?」

「だいじょうぶ、ぼくなりに楽しんでるから」

「そう」

 名響は買い物にきてなにも買わないのに楽しめるものってなんだろうと考えていた。

 蒼空がふと立ち止まり周囲を見渡した。同じように母と子が買い物をしている。そんな光景を見て頬が少しあがったように見えた。

 もしかしたら本当の母親の愛を待ち望んでいるのだろう。いい加減離れ離れもいやになっているのだろう。名響は幼児の心情を汲むようにそばにいるだけだった。

 店内をゆっくりと買い物をする二人だが、蒼空が一人さっさと歩いていった。名響が気づいたときには遅かった。2秒も視界に入っていないと下半身より小さな子どもは見失ってしまう。

 名響は胸に“ずんっ”という重みがのしかかった。

「どこ、蒼空?」

 声を張りあげるわけにもいかず、店内を歩き回ることになる名響だった。

 一方、蒼空はお菓子売り場にいた。ほかの子どもたちが愛しそうに欲しいお菓子や玩具に手を伸ばそうと見入っている。

 それぞれの母親も別れて買い物をしているのだろう。おそらくこのお菓子売り場で待っているように言われて離れている。買い物で言うことの聞かない子どもに不自由な買い物の選別をしなければならない。手枷足枷になり思うようにはできないが、興味津々な場所ならじっと待っているものだ。だが、片時も目を離すのは親として愚行である。

「ねぇ、きみさ」蒼空が母親と一緒ではない一人の子どもに声をかけた。年齢や背丈が同じくらいの子どもだ。

「なに?」つぶらな瞳で蒼空を見つめるその幼児は母親の言いつけどおりに、お菓子売り場でたむろしている。

「なにしているの?」

 すると子どもは、お母さんに買ってもらう。いい子にして待っていれば買ってくれるかもしれないから、と言い張っていた。

「それ、ほんとうに買ってもらえるわけ?」

 子どもは唇を尖らせながら黙ってしまった。期待は半分、わがままを押し切って残り半分を強制的に買わせる。

 蒼空の頬が吊りあがるような笑みを浮かべた。

「いいことおしえてあげる」

 その幼児に蒼空は耳元で囁いた。たった一つのおもちゃやお菓子をねだろうとする子どもを愚弄していた。なぜそんなにも欲しがるのか、理解ができず、その子どもを唆す。

 

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キッズ・レンタル 第1話第2話第3話第4話

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