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現代ファンタジー

キッズ・レンタル4(全4話)

   

 10分後、その幼児は店員につかまって母親とともに謝罪していた。

 悪の道へと落とし入れようと蒼空は悪知恵を吹き込んだ。つまり買ってもらえないなら盗んでしまえと。

 当然、店員にみつかりお叱りをうける。

 蒼空にも感情が芽生えはじめているかのように、ああ、かわいそう。と同情の言葉を薄い唇からもれていた。

 するとタイミング悪く、あの子に言われたからと、突如指を指されていた。

 買い物をおえた名響はその視線を感じて入り口の自動ドア前で足を止めた。蒼空は動じなかった。子ども同士の密約に大人が本気になってはいけない。だが、名響だけは蒼空を蔑視の眼むけていた。

 疑いの目で見ていた。この子ならやりかねない。

 証拠はなく、ただ子どもが言い逃れしようとほかの子どもに罪をなすりつけようとしている、と蒼空は店員とその母親に言った。

 名響はわけがわからないが、蒼空が嘘をついているのを見抜いている。嘘というより何か関わりがある。そしてその子どもに何かを吹っ掛けたことを見抜いていた。

 その場を収めるために名響は何も言えなかった。なぜなら自分の連れている子どもが罪の手引きをしたとあらば世間に顔向けができない。

 唐突にどこの子かもわからない頼まれ子が罪を犯したと触れまわられたら困るのは、名響にとっても改にとっても崩壊の一途でしかない。暗雲の暮らしの中で生きていけるほど人は強くない。

 その懸念からこの場で問い詰めることができなかった。

「行きましょ」

 名響は幼児の手を引っ張り、そそくさと自動ドアが開く一瞬の躊躇いすら待っていられなかったように空いた手でドアをこじあけようとしていた。

 店員は困惑しながら会釈して見送った。

 その帰り道、名響と蒼空は無言だった。名響の頭上から青い空が二人を見つめているような視線を感じながら、どこか後ろめたさをにじませるようで、足取りが重かった。

 マンションの入り口のところで、名響は巡る思考の答えを蒼空に言い放った。

「蒼空、嘘をついたのは、あなたね──」

 

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