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現代ドラマ

東京;三鷹ブギウギ(前編)

   

三鷹のふれあい広場で関西訛りの幼女と出逢う遥翔。

声をかけると「ナンパお断り」と口の悪さが癇に障った。

せっかく親切心で声をかけたが、立ち去ろうと思ったが一言二言話すと両親を待っていると言う。

もう数時間が経っていた。捨てられたと思った遥翔は、事実を受け入れていない幼女の手を引き実家へ連れて帰った。
 

幼馴染の優星と稜が待っていた。母は小さな女の子に気づき受け入れる。しかし、遥翔はこの幼女との出逢いによって街のゴロツキに目をつけられることに──

 

 三鷹商店街でふらつく藍染あいぞめ 遥翔はるとはうつむきながら深いため息を吐いていた。空を見上げれば雲ひとつない晴天が広がっているというのに、太陽の光の恵みを浴びてもこの男は枯れ葉のようにしょんぼりとしていた。

「やる気でねー」

 古着屋“三鷹ブルースショップ”の三代目経営者であるが、一年前に大学を卒業したが、大企業に就職せずに家業を継ぐ決心を固めた。三年前に二代目の父が不慮の事故によって他界してしまった。

 古着屋を営んでいるため仕入れの問屋から古着を大量に買い求めに関西方面まで軽トラックを走らせるのだが、高速道路で思わぬ玉突き事故に巻き込まれてしまった。

 さすがに家族は憔悴していたが、母がふんばって悲しみをこらえながらも父が遺した古着屋をもちこたえていた。

 そんな母を見て遥翔が意を決して継ぐ意思を述べたのだ。二年は修業としてアルバイトをしていたが、今年になって経営者としてバトン母から受け取った。しかし、どうも最近それもこなれてしまい、やりがいのようなものを見いだせずにいた。

 今日も仕事の合間の暇つぶしのために三鷹の町を練り歩いていた。

「あん?」

 遥翔の視界に入ったのは広場の中心で5歳くらいの幼い女の子が寂しそうに座り込んでいる。

 グレイのパーカーとジーパンに白スニーカーの恰好。だがよく見ると薄汚れている。襟や袖のあたりが擦れていた。髪の毛は三つ編みを一本に束ねていた。そこだけは特徴的な印象を遥翔は視線を流した。

 あきらかにようすがおかしい。小奇麗とは言いがたいからだ。

「なにしてんの?」さりげなく遥翔は声をかけてみた。

 女の子は眉をさげていかにも困ってます、という顔をしていた。何も答えないその女の子に妙に肩入れしてしまう。自ら古着を着てるとは思えない。遥翔は古着愛好家というのは見ればわかる。ファッションのなんたらもわからない幼い女子にそこまでのこだわりがあるはずがない。

「どうした? おれに言ってみなよ、何か力になれるかもしれない」

 女の子は顔を上げて遥翔に面とむかって言った。「気安く話しかけんなよ。ナンパお断り!」

「するか、ボケ! まだガキのくせに…」

 遥翔は情けをかけたが、手痛いしっぺ返しにあった。こんな少女に良心を踏み躙られるのだとガッカリした。

「将来、美人になるかもしれんやろ」

「どの口が言ってんだよ、このマセガキが」

 遥翔は舌打ちして少女に背をむけて去ろうとしたときだ。

「あんな、うちおとん捜しとんよ」

 少女の素直な困りきった顔は、やはり抛っておけない弱々しさを抱かせる小さな顔立ちだった。

「最初から言えよ」

 素直になればいいものを…と遥翔は吐露しながら振り返った。

「親父さんとはぐれたんか? 迷子?」

 少女はまた黙った。

「なんだ、だんまりか…てか、おまえの家は?」

「李さんちの近く」少女は座り込みながら答えた。

「はっ?」遥翔はどこかわらかなかった。生まれ育ったこの街でしらない場所はないと自負さえしていた。「どこのだれだよ…」

「李さんといったら名物屋台のとこやろ、しらんのかボケ!」少女は睨みつけながら毒を吐いた。「この街の住人ちゃうんか?」

「李さんって、ああ、あそこか、台湾名物屋台の李飯店か…」

「そや、ぼけ」

 遥翔はとても湧き立つ真昼どきの時間を過ごしている。

「てかな、協力してやんだから言葉に気をつけろ、このチビ」どこの出身かはわかる。大阪か、違っていても関西の方だろう。

 ぷいっとそっぽむいた。

 無愛想な態度だからだれにも相手にされない。可愛げもなければ愛嬌すらない。だが、遥翔はなんとなく少女のことがわかった気がする。性格が最悪だ。

「とりあえず家に帰ってみたらどうだ?」

「この公園で遊んでなって言われたんよ、だから待ってるん」

 遥翔は腑に落ちないことに気づいた。

「おい、それっていつごろの話だ?」

「昼前や…」

「はぁ?」

 日は傾き少し欠けた月と一番星が深みのある空の中で輝いていた。

「もう17時過ぎてるぞ…」遥翔は腕時計をみて確かな時間を目視する。

 少女が座りこんでいたのは憔悴していたからだ。

「腹空いてるだろ?」

 首をこっくりとうなずいた。やっと子供らしい素直な態度になった。

「おれん家来い、とりあえず腹ごしらえだ…」

 遥翔はちいさな子供に善良な態度で応えた。これまで浮かべたことのない笑顔を繕ってみせた。

「なんもせんやろな!」少女は敵意ある眼光で遥翔をにらんでいた。

「このガキめ…」
 
 

“ふれあい広場”で出会った二人。それはまるで運命のように。暇人の遥翔と人生に捨てられた少女の物語がはじまる。

 

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