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ミステリー

あまつさえ、裏を探る者!2(全4話)

   

豊永大臣の収賄疑惑の謝罪会見を報じたテレビ局に神山はいた。

どういった理由で収賄疑惑に至ったのか、その経緯を探りに局内に潜入した。

今にもぶっ倒れそうなアシスタントディレクターに話を聞くことができた。すると収賄疑惑のネタを取材したフリーの記者がいることを話す。

神山はその人物に話を聴けば真相にたどり着くことができる。そんな兆候がみえた。

テレビ局内の通路を物思いに考えながら歩く神山の鼓動が弾んだ。

その偶然の出会いは期待していたが、潜入中の神山は声をかけられず…。

しかし、彼女の方から声をかけ、思いもよらない約束を…

 

 神山は海面に浮かぶ孤島のテレビ局にいた。

 テレビ局内に潜入しようとしたが裏手の関係者入り口には警備員がいて阻まれた。

「今日のイベントに出演する予定なんですよ!」

 嘘だ。

「どのイベントですか?」警備員の鉄仮面のような表情を崩さない顔に神山はややたじろいだ。

「いや、あのー、なんだったかな…バラエティー的な番組だったような気がする…」

「すみませんが、お引き取りを」警備員のガードは鉄壁だった。

「ちっ」神山は舌打ちをした。「スーツ姿じゃ、ハッタリにもならないか」

 そこへ事務所で待機している秀吾からメールが届いた。

「そういうことか、どうやって侵入しようかと第二案を練っていたが、取り越し苦労だったようだな…」

 大勢の観光客や遊びにきている親子連れやカップルとすれ違う。平日だというのにこの場所はエンターテイメントを売りにしているレジャーランドだ。

 仕事以外で訪れる場所ではないことに、神山は周囲の笑顔に一人顔を曇らせていた。

「あぁ、彼女欲しい」そのたびに憧れの月城アナウンサーの顔が額のあたりで浮遊する。

 テレビ局の正面玄関へと向かった。秀吾のメールにはどうやって潜入するか、その指示がしるされていた。

 依頼人から入館許可を得ていたため、受付で手続きをすませ身分をしっかりと提示させると、すんなりと入ることができた。ビジターカードを首からさげていれば局内を自由に動ける。

「ふー、リスクなしってのは気楽でいいもんだな。もっともこのあとの行動がたいへんだけど」

 神山はすぐさま近くのトイレに入った。出てきたときはニット帽をかぶり、真っ黒なレイバンのサングラスをかけて、黒色のパーカーにジーンズ、黒のスニーカーというラフなスタイルに変装した。大きめのトートバッグにスーツとワイシャツにネクタイ、革靴を入れていた。

 単独行動の神山はわりとテレビ局内を好き勝手に動きまわっていた。もっと警戒され出入りしてはいけないところがあったりとか、収録しているスタジオ附近には立ち入ることができないとか、そういう禁止事項があると思ったが、目的場所へと向かう神山を阻む者は誰一人としていなかった。

 報道部の名前が刻まれたプレートが掲げられた扉の前にたどり着いた。

「ここか…、だが、すごいオープンだな」

 バラエティ番組や報道番組で、たまに報道局のフロアにカメラが潜入しレポートをしているコーナーがある。

 その情景を神山は思い出していた。意を決して扉の中を覗き見る。すでに扉は開かれ、思っていたとおりの情景が飛びこんできた。

「人が少ないな…」

 いちばん目についたのが、アシスタントディレクターが今にもぶっ倒れそうな姿勢で身体がゆらゆらと揺らめいている女性に声をかけた。睡魔に襲われているが話をうかがった。かろうじて意識はまだこちら側にいたようで、神山の呼びかけに応じてくれた。どうやら五日も徹夜だという。テレビ番組作りにそこまで精神を酷使して憔悴している姿をみると同情してしまう。

 めんどくせぇ、と事務所のソファで身を投げている神山は恥ずかしくなる。しかしこの人たちは自ら好きこのんで入り込んだ世界だ。今のこの精神状態もまた覚悟の上だったのだろう。

 調査する上で聴きこみがどれほど重要なものか、あらためて思い知る。まるで誘われるように他者の言葉が導いていく。また翻弄されとんだ見当違いな証言もあったりするが、今回は前者のようだ。

 仕事熱心なアシスタントディレクターの女子に感謝だ。

 なぜ大物政治家のスキャンダルが浮き彫りになったのか、それが知りたかった。どういう経緯でこのテレビ局が知り、大臣が謝罪会見にまで追い込まれたのか、やっとわかった。想像の範疇かもしれないが裏付けがあるのとないのでは行き着く調査の結果は大きく左右する。

 依頼人からの絶対の指示でもあった。

 局内で噂になっている記者がいるとそのアシスタントディレクターの女子は教えてくれた。

 取材記事の捏造疑惑が抱かれている人物かもしれない、と。例の大臣とフリーの記者に細長いパイプがあると公言しているということだ。

 それが事実であれば、さらにその裏がある。真相はその裏の部分を隠す何かがあるからあのような適当な雰囲気と空気と空虚な感情が見えてしまう謝罪会見になったのではないか。

 神山はそう見立てていた。

「楽勝、なかなかの情報だ。さすがおれって名探偵、やるときはやる」自画自賛しながら局内の通路を歩いていると眼前に信じられないほどの恍惚とした光が差し込んだ。

「マジか…、でも可能性は90%あると思っていた。期待もしていたじゃないか」

 女神が輝きを放って近づいてくる。変装中の神山の姿に気づくだろうか。何度か会っているが息を押し殺しながら女神の横を通り過ぎる。うつむきながら目線をあわせないようにしている。今は任務続行中。歯がゆくも自分から声をかけることはできない。

“ごめん、月城アナ”、神山と月城はすれ違った。

 コツコツとヒールの足音が壁や天井に反響していた。しかし、コツッ、と止まった。

 背後から呼び止める声が神山の背中に触れた。

「あらっ、探偵さん、また何かの裏を嗅ぎまわっているのかしら?」

 憧れの女子アナウンサー月城つきしろ 花乃はなのが話しかけてきた。

 

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あまつさえ、裏を探る者! 第1話第2話第3話第4話

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