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サスペンス

秘密-すれ違う二つの心-(17)

   

「そうだね。あ、つゆだくでよかったよね?」

「ああ、もちろんさ。持って帰るまでにツユがご飯に染み込んで……ああ! 見てるだけでよだれがでてきた!」

 誠と二人、夜中のオフィスで牛丼を掻き込む。雄一郎がいればウルサい食事も、誠と二人ならば本当に静かな食事となる。

「最近さ、雄一郎の奴、つき合い悪いよな」

 あまりに静かなのも寂しいので、話題を振った。

「ああ、そうだね。最近は例の人妻を落とすために忙しいみたいだね」

「誠は雄一郎の相手がどんな奴なのかしってるのか?」

「ううん。そこまでは聞いていないよ。あまり人の恋路をじゃまするのも悪いしね」

「恋路って……相手は人妻だろう? 不倫じゃないか」

「そうだね。あまりススメられる関係じゃないけどね。でも安心しなよ。雄一郎が狙っているのは創の奥さんじゃないから」

 誠に言われドキッとした。こいつは時々、人の心の中を読んでいるんじゃないかと思うような発言をすることがある。雄一郎と智美の関係を疑うわけではないが、少しはそんな不安もあったのだ。

「相手のこと、知らないんじゃなかったのか?」

「うん、知らない。でも違う気がするんだ。何となくだけど」

 誠に言われると、何だか納得してしまう。口数が少ない誠の言葉は、雄一郎と違って妙に重い。確実な証拠を掴んでいるわけではないが、誠に言われるとそれが事実なんだなという錯覚すら覚える。
 智美が相手ではないにしろ、雄一郎の相手がどんな女性なのか少し気になる。明日奴を問いただして、すっきりさせるのもいいかもしれない。

「どうしたの? 考え事?」

「いや、大したことないんだ。明日久しぶりに雄一郎を昼飯に誘ってみるか。アイツ、昼飯を一ヶ月おごるって言っておきながら、昼休み前になると営業に出かけるからな……明日はちゃんと捕まえておかないと……」

 その後、少しの雑談をしながら俺たちは牛丼を平らげた。

 

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